キャラクターアークとは|人物の変化を話ごとに書き出すテンプレート

キャラクターアーク(character arc)は、人物が物語の始まりから終わりまでをたどるあいだに変わっていく道筋です。何を信じ、何を望んでいた人物が、どんな出来事を通ってどう変わるのかを指します。アークは「弧」という意味で、人物の変化を一本の弧にたとえた言葉です。

この記事では、アークの三つの形を手短に見たあと、人物の変化を話ごとに書き出しておく方法を扱います。最初と最後だけを決めておくと、連載の途中で人物が今どのあたりにいるのかを見失いやすいからです。例に使うのは、TypeTakの講座実例でたどるウェブ小説連載で書いたウェブ小説『黒魔法使いと言われましたが、得意なのは土掘りだけです』の主人公、クレイ・ローウェンです。

ひと目でわかるポイント

  1. アークは、人物が望むものと本当に必要なものとの距離から生まれる
  2. 形は大きく三つ。変わるアーク、自分は変わらずに周りを変えるアーク、悪いほうへ落ちていくアーク
  3. 最初と最後だけでなく、変わった話と、きっかけになった出来事を一行ずつ積み重ねる
  4. 連載では、人物が元に戻ってしまう話もアークの一部として書いておく

望むものと、本当に必要なもの

物語の始まりで、人物は何かを望んでいます。ところが話が進むにつれて、その人物に本当に必要だったのは別のものだとわかってきます。この二つの距離が、アークの長さになります。

クレイは土魔法しか使えない平民の少年で、古い判定石の読み違いから、学院じゅうに黒魔法使いだと信じられています(韓国語では「土」と「黒」の音がほぼ同じで、それがこの作品の笑いのもとです)。クレイが望んでいるのは、資格を取って安定した職に就くことです。心の奥では、平民だからといって見下されないことを願っています。ところが学院で認められるほど、その評価はすべて「黒魔法使いとして」の評価になっていきます。クレイが望んだ認められ方と、実際に受ける認められ方のずれから、この作品のアークが生まれます。

望むものと必要なものは、キャラ設定テンプレの「望むもの(表)」と「望むもの(奥)」の項目から出発すると見つけやすくなります。

キャラクターアークの三つの形

形 人物に起きること 向いている物語
変わるアーク 間違った思い込みを捨て、本当に必要なものを手に入れる 成長もの、主人公が最初とは別の人になって終わる物語
変わらないアーク 人物は最初の信念を守り通し、その信念が周りの人物や世界を変える 信念を曲げない主人公、シリーズものの探偵やヒーロー
落ちていくアーク 必要なものから目をそらしたり、間違った思い込みを固めたりして崩れていく 悲劇、堕ちていく悪役、闇落ち

ひとつの作品の中でも、人物ごとに形が違ってかまいません。主人公は変わるアーク、師匠は変わらないアーク、ライバルは落ちていくアーク、という具合です。脇役全員にアークが要るわけでもありません。数場面しか出ない人物は、最初の姿のままでも物語は揺らぎません。

最初と最後だけを書いたときに起きること

アークを書くとき、「最初:臆病な少年 → 最後:みんなを守る魔法使い」のように二つの欄だけを埋めることがよくあります。短めの長編なら、これで足りるかもしれません。けれど連載のように話数が増えていくと、こんなことが起きます。

  • 第30話を書いているのに、この人物が今、最初と最後のあいだのどこにいるのかわからない
  • あいだをつなぐきっかけが原稿になく、人物がある話で急に変わる
  • 前の話を直しているうちに、その時点でもう変わっていたのかどうか迷う

そこで、アークは話ごとに積み重ねて書くほうがうまくいきます。人物が変わるたびに、いつ、何のせいで、何が変わったのかを一行ずつ足していくのです。

キャラクターアークを話ごとに書き出す方法

アーク表は、一行に一回の変化を書きます。列は五つあれば足ります。

  1. 話:変化が起きた話や章
  2. きっかけになった出来事:何が人物を動かしたか
  3. 信じていること:この話のあと、人物が何を信じるようになったか
  4. 関係:誰との間柄がどう変わったか
  5. 望むもの:追いかける目標が変わったなら、何に変わったか

毎回すべての列を埋める必要はありません。今回の変化が関係だけなら、関係の列だけ書きます。大事なのは、行が話の順に積み重なっていくことです。どの話を開いても、その話より上の行までが、その時点の人物です。

そのままコピーして使えるキャラクターアークのテンプレート

登録もメールアドレスもいりません。下の枠をそのままコピーして使えます。上の段は最初に一度だけ書き、下の段の行は原稿を書きながら足していきます。

キャラクターアークのテンプレート
[最初に一度だけ書く欄]
人物:
アークの形(変わる/変わらない/落ちていく):
最初に望んでいるもの:
最初に信じていること(間違った思い込み):
本当に必要なもの:
最後にどうなっていてほしいか(まだ決めていなければ空けておく):

[変わるたびに一行ずつ足す欄]
話 | きっかけになった出来事 | 信じていること | 関係 | 望むもの
 |  |  |  | 
 |  |  |  | 
 |  |  |  | 

「最後にどうなっていてほしいか」は、空けたまま始めてもかまいません。連載は書きながら結末が決まっていくことが多く、下の段の行がたまってくると、最後の姿が自然に見えてくることもあります。

例:クレイ・ローウェンのアーク

クレイのアークを、講座の作品の三つの区間(序盤の誤解と入学、学院への適応と地位の上昇、本物の黒魔法の痕跡)に合わせて、区間ごとに一行ずつ書くとこうなります。原稿が進めば、行は区間ではなく話の単位で増えていきます。

欄 クレイ・ローウェン
アークの形 変わるアーク
最初に望んでいるもの 資格を取って安定した職に就くこと
最初に信じていること 土魔法はつまらない魔法で、平民は目立たないほうがいい
本当に必要なもの 黒魔法使いとしてではなく、土魔法使いである自分として認められること
最後にどうなっていてほしいか まだ決めていない
区間 きっかけになった出来事 信じていること 関係 望むもの
序盤の誤解と入学 判定石が「土魔法」を「黒魔法」と告げる 誤解さえやり過ごせば、資格まではたどり着ける ルシアンが見下していたのに、怯えはじめる ばれずに卒業すること
学院への適応と地位の上昇 初めての研究課題で、土魔法を使って成果を出す 土魔法にもできることがある セラフィーヌがクレイの「謙遜」に感心する 研究室を守ること
本物の黒魔法の痕跡 学院の近くの土地が不自然に腐る (まだ決めていない) (まだ決めていない) (まだ決めていない)

こう書いておけば、学院への適応の区間の話を書くとき、「クレイは土魔法を少しは信じはじめている」という状態から場面を始められます。講座では、クレイの能力が暮らしの問題を直すところから始まり、施設の補修、地形の変更、災害からの復旧、腐った土地の回復へと大きくなっていく方向も一緒に決めてあります。能力が大きくなる段階と、信じていることが変わる段階を同じ表に並べておくと、二つがばらばらに進むことが減ります。

連載でアークを書くときに気をつけること

連載のウェブ小説は、一冊で完結する長編と違い、話ごとに読者の反応を見ながら続いていきます。アークも一直線には進みません。

  • 元に戻る話も書いておく。 一度変わった人物が、危機を前に以前の思い込みへ戻ってしまう話があります。これもアーク表に一行で書きます。戻った記録があるからこそ、次の変化が大きく読めます。
  • 区間が終わったら一度読み返す。 ひとつの区間を書き終えたら、アーク表を上から読み、次の区間で人物がどこへ向かうかを決めます。
  • ループものや転生ものは、出発点が二つある。 死に戻る前と後、転生する前と後では、人物が違うからです。前の人生を最初の行の上に「前の人生」として別に書いておくと、人物が何を変えようとしているのかがはっきりします。

関係の移り変わりは、相関図にも書いておけます。相関図の作り方で紹介したように相関図の関係に期間をつけておくと、アーク表の関係の列とあわせて、人物どうしの構図全体を見渡せます。

TypeTakでキャラクターアークを書く

TypeTakは、エージェントと一緒に書くAI執筆エディタです。人物は、グラフを兼ねた設定の辞典であるワールドのノードになり、アークはノードの中に二つの形で積み重なります。

  • 文章で残す変化はセクションの展開に。 「性格と心理」のようなセクションの下に、人物が何になり、何を得て何を失い、何を知ったかを、話の順に一行ずつ積み重ねます。項目の前の話数を押すと、その出来事が出てくる原稿に戻れます。(セクションの展開)
  • 短い値は開始と終了で。 所属や立場のように表で見比べる値は上書きせず、値ごとに、どの原稿のページやボードのカードで始まって終わったかをつけます。(プロパティの開始と終了)
  • 原稿で変わったことはワールド整理で。 ワールド整理を押すと、エージェントが章ごとに、人物が何になり、何を得て何を失い、何を知ったかをセクションの展開に積み重ねます。
TypeTakのワールドの人物ノード。所属のように変わる値はプロパティの表に、人物がたどってきた変化はセクションの下に積み重なります。

エージェントは、草稿を書く前や質問に答える前に、ワールドから必要な設定を探して読みます。そのため第30話を書くときも、その話の時点のクレイで場面を続けます。物語に合わせて設定が変わっていく問題をどう解いたかは、開発記物語は流れる — 時点のある設定に書きました。

よくある質問

キャラクターアークとキャラの成長は同じ意味ですか?

成長は、アークの形のひとつです。アークは人物が変わっていく道筋全体を指し、その道筋は悪いほうへ向かうことも、人物はそのままで周りが変わっていくこともあります。

すべての人物にアークが必要ですか?

いいえ。主人公と、物語を引っぱる主要人物の数人で足ります。数場面しか出ない脇役は、最初の姿のままでも物語は揺らぎません。

人物が急に変わったように読めるときは、どうすればいいですか?

アーク表で、その話のすぐ前の行を見ます。きっかけになった出来事の列が空いているなら、その変化を導く出来事や場面を、前の話にひとつ足すときです。

キャラクターアークは設定シートとどう違いますか?

設定シートは人物がどんな人かを書き、アーク表はその人がいつ、どう変わるかを書きます。設定シートの変わる項目に期間をつける方法は、キャラ設定テンプレ|小説のキャラクターシートに入れる項目と、物語で変わる項目にあります。

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