小説の表記ルール|三点リーダー・ダッシュ・ルビ・字下げの使い方となろう・カクヨムの記法

小説の表記ルールは、記号の打ち方や段落の始め方など、出版の現場で長く守られてきた書き方の決まりです。法律や規格で決まっているものではありませんが、新人賞の下読みや編集者、Web小説の読者の多くはこの形に慣れているので、守っておくと内容に集中して読んでもらえます。

この記事では、三点リーダー、ダッシュ、感嘆符、かっこ、字下げ、改行といった決まりを一覧にしたあと、ひとつずつ例をつけて説明します。後半では、小説家になろう、カクヨム、pixivでルビと傍点を振る記法の違いと、表記ゆれのそろえ方を扱います。

ひと目でわかるポイント

  1. 三点リーダー「……」とダッシュ「――」は、二つ続けて一組で使います
  2. 「!」「?」のあとに文が続くときは、全角スペースを一つ空けます
  3. 閉じかっこ「」」の直前には句点「。」を打たないのが、いまの小説ではふつうです
  4. ルビの書き方はサイトごとに違います。「|親文字《ルビ》」は、なろうとカクヨムのどちらでも使えます

小説の表記ルール一覧

まず全体を表にまとめます。どれも出版社や新人賞の原稿で広く守られている慣習で、レーベルや作家によって違うところもあります。

項目 決まり よい例 避けたい例
三点リーダー 「…」を二つ続ける 「待って……」 「待って…」「待って・・・」「待って...」
ダッシュ 「―」を二つ続ける 「それは――」 「それは―」「それはーー」
感嘆符・疑問符 あとに文が続くなら全角スペースを一つ空ける 「本当に? 嘘でしょう」 「本当に?嘘でしょう」
かっこの中の句点 閉じかっこの前に「。」を打たない 「行こう」 「行こう。」
段落の頭 全角スペースで一字下げる  クレイは門をくぐった。 クレイは門をくぐった。
会話文の頭 かぎかっこは下げずに行頭から始める 「おはよう」  「おはよう」
数字 縦書きでは漢数字 十八歳、三百人 18歳、300人
ルビ サイトの記法で振る |判定石《はんていせき》 判定石(はんていせき) ※サイトによっては表示が崩れる

例文は、この記事のために作ったものです。TypeTakの講座で書いている『黒魔法使いと言われましたが、得意なのは土掘りだけです』の人物や場面を借りています。

三点リーダー:「……」と二つ続けて使う

三点リーダーは、言葉が途切れたり、間があいたり、言いよどんだりするところに使う記号です。「…」一つで点が三つ並びますが、小説では二つ続けて「……」と六点にするのが決まりです。

  • 「黒…… 魔……」判定石の声がつぶれた。
  • 「僕の属性が……黒魔法?」

変換するときは「てん」や「さんてん」と打つと「…」が出ます。中黒「・」を三つ並べたものや、半角のピリオド「...」は、横書きの画面では似て見えても、縦書きにすると点の位置や向きがずれます。

三つ、四つと重ねて「………」のように長くする書き方もあり、Web小説では沈黙の長さを見せるのに使われることがあります。ただ、新人賞の原稿では二つにそろえておくほうが無難です。

ダッシュ:「――」も二つで一組

ダッシュは、話が途中で切れるところ、言いかけてやめるところ、説明をはさむところに使います。これも二つ続けて「――」と書きます。

  • 「待ってください。今――」
  • その石は――少なくとも百年は使われてきたはずだ――古びて欠けていた。

「ダッシュ」や「けいせん」と打って変換すると出ます。長音符「ー」や漢数字の「一」、マイナス記号は形が似ていますが別の文字で、縦書きにすると向きや長さが合いません。

「……」と「――」の使い分け

どちらも言葉の切れ目に使いますが、三点リーダーは「間」、ダッシュは「断ち切り」です。迷ったら、その人物が自分で黙ったのか、何かにさえぎられたのかを考えると選べます。

  • 自分で言いよどむ:「それは……言えません」
  • さえぎられる:「それは――」「黙れ」

感嘆符と疑問符:あとに文が続くなら一字あける

「!」「?」は全角で書き、そのあとに文が続くときは全角スペースを一つ空けます。句点の代わりに文を区切っているので、次の文との境目を見えるようにするためです。

  • 「あいつ、平民じゃないか? 服を見ろよ」

閉じかっこの直前や、文の終わりに来るときは空けません。

  • 「黒魔法だと!」
  •  会場は静まり返った。黒魔法使いが、この中にいるのか?

「!?」のように二つを並べるときは、全角を二つ続けます。縦書きの本では一文字分に組むこともありますが、原稿では二文字のまま書いておけば編集の段階で直してもらえます。

かっこの中の句点:閉じかっこの前に「。」を打たない

いまの小説では、会話文の最後に句点を打たずに「」」で閉じるのがふつうです。

  • よい例:「入学試験の会場はこちらです」
  • 避けたい例:「入学試験の会場はこちらです。」

学校の作文では「。」」と書くように習うこともあるので、迷う人が多いところです。どちらかが誤りというわけではありませんが、市販の小説やWeb小説の多くは句点を省いています。一作の中ではどちらかにそろえてください。

かっこの中で文が二つ以上続くときは、途中の文には句点を打ち、最後の文だけ省きます。

  • 「わかりました。手続きを始めます」

字下げ:段落の頭は一字下げ、会話文は下げない

段落の最初の文字は、全角スペースで一字下げます。かぎかっこで始まる会話文は下げず、行の頭から書くのが一般的です。

 クレイは試験会場の門をくぐった。白い石壁が、朝の光を照り返している。
「あいつ、平民じゃないか?」
 ささやきが背中に刺さった。

半角スペースや、エディタの字下げ機能だけで下げた原稿は、投稿サイトや応募用のファイルに移したときに消えることがあります。全角スペースを文字として打っておくと、どこへ貼っても残ります。

横書きのWeb小説では、字下げをしない書き手もいます。スマホの細い画面で一字下げると行頭がそろって見えにくい、という理由です。どちらにするかはサイトの読者の好みと自分の読みやすさで決め、作品の中ではそろえます。

改行と空行:Web小説と応募原稿で変える

紙の本では、段落の間に空行を入れません。新人賞の応募原稿もこの形が基本で、空行は場面が変わるところだけに使います。

Web小説、とくにスマホで読まれるなろうやカクヨムの作品では、一、二文ごとに改行し、段落の間に空行を入れる書き方がよく見られます。横書きの小さな画面で文字が詰まると読みにくいからです。

応募原稿・紙の本 Web小説(スマホで読まれる場合)
段落の長さ 数文から十数文 一、二文が多い
段落の間 空行なし 空行を入れることが多い
場面の切り替え 空行一行、または「*」などの記号 空行を数行、または記号
会話の連続 空行なしで続ける 会話ごとに空行を入れることもある

同じ作品を連載してから新人賞に応募するときは、空行を詰め直す必要があります。カクヨムコンテストのように、Web上の作品のまま審査するコンテストもあります。応募先の要項を確かめてください。

数字:縦書きは漢数字、横書きは場面に合わせて

縦書きの小説では、数字は漢数字で書くのが基本です。

  • 十八歳、三百人、二〇二六年

位取りの「十」「百」を入れる書き方(三百二十)と、数字を並べる書き方(三二〇)があります。年号や番号には並べる書き方、数量には位取りの書き方を使うことが多く、作品の中でそろっていれば問題ありません。

横書きのWeb小説では、算用数字を使う作品もよくあります。応募原稿を縦書きにするなら、二けたまでの算用数字は縦中横(横向きに二文字並べる組み方)にする方法もありますが、漢数字に直しておけば迷いません。

ルビの振り方:なろう、カクヨム、pixivの記法

ルビは、漢字の読みや、特別な読ませ方(当て字)を小さく添える文字です。Web小説では、サイトごとに決まった記号で囲むとルビになります。

小説家になろう カクヨム pixiv小説
基本の書き方 |判定石《はんていせき》 |判定石《はんていせき》 [[rb:判定石 > はんていせき]]
漢字の直後だけに書く 判定石《はんていせき》 判定石《はんていせき》 ヘルプに記載なし
丸かっこでの自動ルビ 漢字のあとの(ひらがな)がルビになることがある ヘルプに記載なし ヘルプに記載なし
傍点 一文字ずつ「・」のルビで表す 《《傍点》》 [[emphasismark:傍点>﹅]]

「|親文字《ルビ》」が共通の書き方

ルビを振られる側の文字を「親文字」と呼びます。「|」で親文字の始まりを示し、「《 》」の中に読みを書きます。この形は青空文庫の入力ルールから広まったもので、なろうとカクヨムのほか、アルファポリス、エブリスタ、ハーメルン、Nolaノベルなど多くの投稿サイトで使えます。

  • |黒魔法《くろまほう》
  • |黒魔法使い《ネクロマンサー》 ※当て字や外国語の読みも振れます

親文字が漢字だけなら「|」を省いて、漢字のすぐあとに《 》を書いても、直前の漢字にルビがつきます。ひらがなやカタカナ、記号が混じる親文字には「|」が必要です。「|」は全角の縦線で、「たてせん」と打つと変換できます。《 》は「かっこ」の変換で出ます。

カクヨムでは、親文字は20文字まで、ルビは50文字まで振れます。

なろうの丸かっこに気をつける

なろうでは、漢字のあとに丸かっこでひらがなやカタカナを書くと、そのままルビとして表示されることがあります。「判定石(はんていせき)」と書くつもりがなくても、説明のつもりで書いた「属性(ぞくせい)」がルビになってしまう、というのがよくある例です。かっこのまま見せたいときは、かっこの前に「|」を置きます。

傍点の打ち方

傍点は、強調したい文字の横に打つ点です。

  • カクヨムとエブリスタでは、《《 》》の二重かっこで囲みます。《《土》》を掘っただけです、と書くと「土」に傍点がつきます
  • pixivでは、本文入力画面の上のツールから傍点を選ぶか、[[emphasismark:土>﹅]]の形で書きます
  • なろうには傍点だけの記号がないため、一文字ずつ「・」をルビとして振ります。|土《・》のように書くと、点が一つつきます

傍点は、つけすぎると強調の意味が薄れます。一場面に一、二か所までにしておくと、読者の目がそこで止まります。

サイトを移すときの書き換え

なろうやカクヨムで書いた作品をpixivに載せるときは、pixivの「記法変換機能」で一部のルビと傍点の記法をまとめてpixivの形に直せます。新人賞に応募するときは、要項にルビの書き方の指定がないかを確かめてください。指定がなければ、「|親文字《ルビ》」のまま出すか、Wordや一太郎のルビ機能で振ります。

表記ゆれ:一作の中でそろえる

表記ゆれは、同じ言葉が場所によって違う書き方になっていることです。誤字ではありませんが、読者や編集者には気になります。

よくあるゆれ そろえ方の例
「出来る」と「できる」 「〜することができる」の形はひらがな
「下さい」と「ください」 「〜してください」のように動詞につくときはひらがな
「事」と「こと」、「時」と「とき」 「話した事」のように前の言葉を受けるときはひらがな
「言う」と「いう」 実際に話すときは「言う」、「〜という」はひらがな
人名や地名の表記 「ベルカディア」と「ベルカディヤ」のように、設定の表記に合わせる

どちらにするかの決まりは、作家や出版社によって違います。どれを選ぶかより、一作の中で同じ書き方を通すことのほうが読み手には効きます。書き終えたら、エディタの検索で一語ずつ確かめます。

よくある失敗

記号を変換し忘れる。 スマホで書いていると、「...」や「ーー」がそのまま残ることがあります。

  • 直す前:「待って...僕の属性がーー」
  • 直したあと:「待って……僕の属性が――」

ルビの記号が半端に残る。 「《」だけ閉じ忘れると、そのあとの文章がまるごとルビとして扱われたり、記号がそのまま表示されたりします。投稿したら、プレビューでルビの箇所を一つずつ確かめます。

  • 直す前:|判定石《はんていせき が古い声で告げた。
  • 直したあと:|判定石《はんていせき》が古い声で告げた。

ルビを全部の漢字に振る。 読めない漢字に読みを振るのは親切ですが、すべての漢字に振ると、ページが読みにくくなります。初めて出てくる固有名詞や当て字だけに振り、二回目以降は省くのがよく使われる方法です。

TypeTakでルビと傍点を入れる

TypeTakは、エージェントと一緒に書くAI執筆エディタです。エディタには定型文という機能があり、ルビと傍点のテンプレートが最初から入っています。

  • ルビ:親文字を選んで⌘+Shift+(WindowsではCtrl+Shift+)を押すと、「|判定石《》」の形になり、カーソルが《 》の中に移るので、そのまま読みを打ちます。選ばずに押したときは、親文字を打ってからTabで《 》の中へ進みます
  • 傍点:最初はキーが決まっていません。設定の定型文で押しやすいキーを記録しておくと、選んだ文字を《《 》》で囲めます

キーは設定の定型文で変えられます。日本語配列のキーボードで「\」が押しにくいときは、自分の手に合うキーに変えてください。「――」や「……」のように何度も打つ記号も、定型文に登録しておけます。

文字数カウントでは、ルビは親文字だけを数えます。「|判定石《はんていせき》」は3文字です。表記ゆれは検索と置換でページの中から探して、まとめて直せます。原稿をPDFかEPUBで書き出すときは、書き出しの設定で縦書きを選べます。

よくある質問

三点リーダーはなぜ二つ続けるのですか?

はっきりした規定があるわけではなく、活版印刷のころから二つで一組にしてきた出版の慣習です。一つだと点が短く、間の長さが伝わりにくいことも理由に挙げられます。新人賞の要項で決められていることはほとんどありませんが、守っておいて損はありません。

「!」「?」のあとはなぜ一字あけるのですか?

句点の代わりに文を区切っているからです。あとに続く文との境目を、句点と同じくらいはっきり見せるために全角スペースを入れます。閉じかっこの直前や段落の終わりでは空けません。

会話文の最後に「。」をつけるのは間違いですか?

間違いではありません。ただ、いまの小説では省くのがふつうで、市販の本やWeb小説の多くがそうしています。一作の中ではどちらかにそろえます。

Web小説でも字下げは必要ですか?

決まりではありません。なろうやカクヨムの作品には、字下げをしないものも多くあります。新人賞に出す原稿や、紙の本の形で読ませたい作品では、一字下げておくのが基本です。

なろうとカクヨムでルビの書き方は同じですか?

基本の「|親文字《ルビ》」と、漢字の直後に《 》を書く形は、どちらでも使えます。違うのは傍点で、カクヨムは《《 》》で囲み、なろうは一文字ずつ「・」のルビを振ります。なろうでは丸かっこのひらがながルビになることがある点にも気をつけてください。

漢数字と算用数字はどう使い分けますか?

縦書きでは漢数字、横書きでは算用数字を使う作品が多くあります。横書きのWeb小説で漢数字を使ってもかまいません。一作の中ではどちらかにそろえます。

参考資料

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