小説にAIを使ってもいい?

AI執筆ツールを作っているTypeTakチームがまとめました。私たちもこのテーマと無関係ではないため、各サイトと主催者が公開している規約・募集要項と報道だけを根拠にし、出典をすべて載せています。2026年10月15日時点の内容で、規約が変わればこの記事も更新します。応募や契約のような大事な判断の前には、規約や募集要項の原文を必ずご確認ください。

ひと目でわかるまとめ

日本の主な小説投稿サイトで、AIを使った作品の投稿そのものを禁止しているところはありません。そのかわり、AIをどう使ったかを作者が設定・申告する仕組みが広がっていて、小説家になろうは2026年9月からすべての作品で設定が必須になりました。新人賞は「誤字チェックやアイデア出しなどの補助までは可」とする賞と、「使い方を書いて申告」する賞が多く、AIに執筆させた作品を選考対象外とする賞もあります。法律の面では、作品にAI利用の表示を義務づける規定は個人の作者にはなく、論点は主に著作権です。

サイト 通常の投稿 コンテスト・書籍化 読者に見える表示
小説家になろう AI利用状況の設定が必須、全文AIの作品は不可 (公式) 未設定の作品は対象外となる場合あり (公式ブログ) AI直接使用・AI間接利用は作品ページに表示
カクヨム AI作品の禁止規定なし、タグは推奨 (公式) カクヨムコンテスト11はタグ付けが必須 (公式) AI本文利用などのタグ
アルファポリス 投稿は可、「AI生成作品」タグを推奨 作品の大部分をAIで作った作品は応募・出版申請不可 (KAI-YOU) 「AI生成作品」タグ
ノベルアップ+ AI生成作品の投稿は可、フラグ設定が必要 AI生成作品は原則コンテスト対象外 (公募ガイド) AIフラグ、応援ランキングの対象外
エブリスタ AI生成作品の投稿は可、制作情報の設定が必要 (公式) コンテストごとに要項で規定 制作情報の設定
pixiv小説 AI生成作品はチェックが必須 (公式) 確認中 別ランキング、読者が非表示にできる

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「規定なし」は、規約や要項にAI利用を扱った条項がないという意味です。

新人賞のAI条項、四つの型

賞 AI条項 型
電撃小説大賞 「誤字脱字のチェック」「表現の整え」「アイデア出し」など補助的な範囲に限る 補助まで可
横溝正史ミステリ&ホラー大賞・野性時代新人賞 プロット作成や表現チェックのための補助的な利用は不可としない 補助まで可
江戸川乱歩賞・小説現代長編新人賞 補助的に利用した場合は原稿の冒頭に使い方を記載 申告制
第15回ハヤカワSFコンテスト 利用した場合は梗概の末尾に使用方法を記載、プロンプトの履歴を保存 申告制
HJ小説大賞・オーバーラップWEB小説大賞 生成AIに執筆させた作品は選考対象外 AI執筆作品は対象外
警察小説新人賞・集英社みらい文庫大賞 AIの使用を禁止、または一部でも使えば選考対象外 AI使用を禁止
日経星新一賞 AIの文章はそのまま使わず人が加筆・修正、使い方を500字以内で記載 条件付きで可

補助までは認める型 — いちばん多いのがこの型です。電撃小説大賞は「生成AIの利用は、『誤字脱字のチェック』『表現の整え』『アイデア出し(ブレインストーミング)』など、創作を支援する補助的な範囲に限ります」と書いています(公募ガイド, 2026-06-25)。KADOKAWAの横溝正史ミステリ&ホラー大賞と野性時代新人賞は「プロット作成や表現チェックのため生成AIを補助的に利用することを不可とはしません」という言い方です。このミステリーがすごい!大賞は「AI生成による文章を用いた原稿の応募は不可」として、本文にAIの文章が入るかどうかで線を引いています。

使い方を書いて申告する型 — 江戸川乱歩賞は「創作に際しAIを補助的に利用した作品(プロット作成や文章表現の支援など)については、応募原稿の冒頭にどのようにAIを用いたかについて記載してください」としています。松本清張賞、小説すばる新人賞、文藝賞も、表紙・応募フォーム・略歴など場所は違いますが、使い方の記載を求めます(公募ガイド, 2026-06-25)。ハヤカワSFコンテストは第15回の要項で「生成AIを利用した場合は、梗概の末尾に具体的な使用方法を明記すること」とし、選考中に「プロンプトの入出力内容など」の提示を求める場合があるので履歴を保存するよう書いています(早川書房 第15回要項)。

AIに執筆させた作品を対象外にする型 — HJ小説大賞は「生成AIによって執筆された作品は選考の対象外」、オーバーラップWEB小説大賞は「生成AIに執筆させた作品は選考から除外致します」です。対象は「執筆」なので、アイデア出しまで含むかどうかは文言からは決まりません。アルファポリスも「作品の大部分」をAIで作った作品を全コンテストの対象外にし、校正やプロットの検討などの補助的な利用は対象外としています(KAI-YOU, 2025-11-18)。

AIの使用そのものを禁止する型 — 警察小説新人賞は「AIの使用は禁止とします」、集英社みらい文庫大賞は「全部または一部に生成AIを使用していた場合は選考の対象外」と書いています(公募ガイド, 2026-06-25)。いちばん範囲の広い書き方です。

星新一賞はこのどれにも当てはまらず、創設時から「人間以外(人工知能等)」の応募も受け付けています。生成AIを使う場合は「AIが生成した文章はそのまま利用せず、人間が加筆・修正してください」とし、加筆前後の記録を残すことと、利用したAIと制作過程を応募フォームに500字以内で書くことを求めています(日経星新一賞 応募規定)。

どこからが「AIを使った」になる?

新人賞の要項は「補助的な範囲」「執筆」「使用」といった言葉で書かれていて、誤字チェックやアイデア出しがどこに入るかは賞によって書き方が違います。投稿サイトの中には区分を細かく定めたところがあるので、並べてみると自分の使い方の位置がつかめます。

サイト 認められている使い方 認められていない使い方 申告・表示が必要なもの
小説家になろう アイデア出し・資料調査・誤字脱字チェック(AI補助的利用)、AIの下書きを自分の表現に置き換える(AI間接利用)、AIの文章を一部そのまま使う(AI直接使用) 本文すべてがAI生成の作品、本文へのプロンプト掲載、実態と違う設定 全作品で4区分のどれかを設定。AI直接使用・AI間接利用は作品ページに表示
カクヨム すべての使い方(AI利用を理由とする禁止規定なし) AI利用を理由とする禁止規定なし 本文の50%以上がAI→「AI本文利用」、50%未満→「AI本文一部利用」、補助→「AI補助利用」のタグを推奨。ドキュメントソフトの自動校正は対象外
アルファポリス 校正やプロットの検討など補助的な利用 大部分をAIで作った作品のコンテスト応募・出版申請 「AI生成作品」タグを推奨
エブリスタ プロット・アイデア出し・タイトル検討などの補助的な利用、表紙・挿絵だけのAI画像 大量投稿、誤解を招く設定 制作過程のすべてか大部分がAIの作品は制作情報で設定
pixiv小説 AI生成作品の投稿(チェックすれば可) 実態と違う設定 制作過程のすべてかほとんどをAIで生成した作品は「AI生成作品」にチェック
Amazon KDP 自分で書いた文章をAIで編集・推敲・誤りチェックする(AI-assisted) 明示された禁止なし AIが作った文章・画像・翻訳(AI-generated)は出版時に申告

どのサイトも、アイデア出し・資料調査・誤字チェックは「補助」として扱っています。 小説家になろうはこの段階を読者に表示せず、カクヨムはドキュメントソフトの自動校正や検索サービスのAI機能をタグの対象から外しています。Amazon KDPも、自分で書いた文章をAIで推敲・チェックした場合は申告不要としています。

分かれ目は、AIが書いた文章が本文に残っているか、残っているならどのくらいかです。AIの下書きを自分の表現に置き換えたなら小説家になろうでは「AI間接利用」、AIの文章をそのまま残したなら「AI直接使用」です。カクヨムは本文の50%を目安に線を引いています。

作家が実際にAIを使う場面で見ると

作家のAIの使い方は、たいてい次の五つのどれかです。上の区分と新人賞の四つの型に当てはめると、こうなります。

こう使ったなら なろう・カクヨムの区分 補助まで可の賞 申告制の賞 AI執筆作品は対象外の賞 AI使用を禁止する賞
アイデア出し・資料調査だけ AI補助的利用・AI補助利用 可 条件付きで可(使い方を記載) 認められる可能性が高い 禁止に該当する可能性あり
誤字脱字・表記のチェック AI補助的利用(カクヨムは自動校正なら対象外) 可 条件付きで可(使い方を記載) 認められる可能性が高い 禁止に該当する可能性あり
AIの下書きを自分の文章に書き直した AI間接利用(なろう) 禁止に該当する可能性あり 条件付きで可(使い方を記載) 禁止に該当する可能性あり 不可
AIの文章を一部そのまま残した AI直接使用(なろう)・AI本文一部利用(カクヨム) 不可 禁止に該当する可能性あり 禁止に該当する可能性あり 不可
表紙・挿絵だけAIで作った エブリスタではAI生成作品に当たらない 要項で確認 要項で確認 要項で確認 禁止に該当する可能性あり

この表は要項の文言とサイトの区分から整理したもので、判断するのは主催者です。迷ったときは、応募する前に要項の問い合わせ先へ確認してください。

法律は何を求めているか

2025年5月28日に成立したAI推進法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)は、2025年9月1日に全面施行されました。国・地方公共団体・研究機関・事業者の責務を定める法律で、罰則はありません(BUSINESS LAWYERS, 2026-06-01)。AIで作った作品に表示を付けることを個人の作者に義務づける規定もありません(お名前.com, 2026-10-07)。

著作権は文化庁の整理が目安になります。文化審議会著作権分科会法制度小委員会の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日)と、「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(2024年7月31日)です(文化庁)。法的拘束力はありませんが(カレントアウェアネス, 2024-04-18)、AI生成物は、人が「創作的寄与」をした場合に著作物と認められうるとしています。判断の要素として挙げられているのは、プロンプトなど指示・入力の分量と内容、生成の試行回数、複数の生成物からの選択で、最終的には個別に判断されます(ASCII, 2024-03-11)。新人賞の受賞作は出版契約や映像化につながるため、星新一賞が「他者の著作物、および作家名や作品名を生成AIの入力に使用しないでください」と書くように、主催者は権利の面にも気を配っています。

規約より先に届くもの:読者の目

各サイトの仕組みを見ると、読者がAI作品をどう受け止めるかが前提になっています。小説家になろうは必須化の理由に、利用が明示されないことで誤解が生まれ信頼が損なわれるおそれを挙げました(KAI-YOU, 2026-05-26)。pixivではAI生成作品は別ランキングになり、読者が非表示にできます。ノベルアップ+ではAI生成作品は応援ランキングの対象外です(公募ガイド, 2026-07-21)。アルファポリスは、生成AI作品の大量投稿がランキングや新着欄を占めていたことを背景に挙げています(KAI-YOU, 2025-11-18)。

受賞作でも受け止め方は分かれます。芥川賞を受けた九段理江『東京都同情塔』は、作者が生成AIの文章を全体の5%前後そのまま使ったと話し、称える声と、AIを使わない書き手への敬意を欠くという声の両方が出ました(CNN, 2024-01-21)。

AIを使うなら、投稿前に二つ確かめてください。

  • AIへの指示やAIの返事(「承知しました、次の場面を書きます」のような文)が本文に混ざっていないか。小説家になろうは本文へのプロンプト掲載を禁止しています
  • 同じ言い回しが話ごとに繰り返されていないか

AIを使っても使わなくても、書き直した記録を残しておく

AIが使われたかどうかを外から確かめる方法は確立していません。新人賞がAIを禁じても、使われたかを調べようがないという指摘もあります(Real Sound, 2026-07-02)。裏を返せば、AIを使っていない作者が疑われることもあります。2026年5月、英連邦財団のコモンウェルス短編賞では地域賞の受賞作にAI使用の疑いが向けられました。財団は判定ツールを使わず、受賞者全員と話し合い、作業中の草稿、タイムスタンプ付きの文書、メモを確認したうえで、受賞作はAIで書かれていないと結論づけました(Commonwealth Foundation, 2026-06-22)。財団は判定ツールだけでは決定的な根拠にならないことも認めています。判断の根拠になったのは、作者が残していた執筆の記録でした。

ハヤカワSFコンテストはプロンプトの履歴の保存を、星新一賞は加筆前後の記録を、要項で求めています。こんな記録を残しておくと安心です。

  • 話ごとの初稿と直した版
  • 構想メモとプロット
  • AIを使ったなら、どの話で何を任せたか。アイデアを聞いただけか、下書きをもらって書き直したか、文章をそのまま使ったか

最後の記録があれば、上の「どこからが『AIを使った』になる?」の表で自分の使い方がどの段階か、すぐに答えられます。

TypeTakでは、ページの過去のバージョンが履歴に残り、エージェントの下書きや添削を入れる直前のバージョンは自動で保存されます。AIの下書きが入ったバージョンと今の原稿を見比べると、その後どれだけ自分で書き直したかを確かめられます。

新人賞に応募する前に確認すること

  • 要項のAI条項が「補助まで可」「申告制」「AI執筆作品は対象外」「AI使用を禁止」のどれか
  • 申告制なら、どこに何を書くか(原稿の冒頭・梗概の末尾・応募フォーム・略歴)
  • プロンプトや加筆前後の記録の提出を求められる場合があるか
  • 受賞後にAI利用がわかった場合の受賞取り消しの条項
  • 投稿サイトで連載中の作品を応募するなら、そのサイトのAI利用状況やタグと応募内容が合っているか
  • 文言があいまいなら、応募前に要項の問い合わせ先へ確認したか

よくある質問

誤字チェックにAIを使っただけでも申告が必要ですか?

投稿サイトでは多くの場合、補助的な利用として扱われます。小説家になろうでは「AI補助的利用」を設定し、読者には表示されません。カクヨムでは、ドキュメントソフトの自動校正はタグの対象外です。新人賞では、申告制の賞が補助的な利用も記載対象にしていることがあるので、要項の書き方を確認してください。

AIを使ったことは法律上、明示しなければいけませんか?

日本の法律には、個人の作者にAI利用の表示を義務づける規定はありません。ただし小説家になろうのように規約で設定を必須にしているサイトや、申告を求める新人賞では、その規約や要項に従います。

更新履歴

  • 2026-10-15 — 初版を公開

参考

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