あらすじの書き方|新人賞の応募用テンプレートと例文

小説のあらすじは、物語の始まりから結末までの筋を、主な登場人物とあわせて短くまとめた文章です。新人賞では原稿に添えて提出する書類になり、Web小説では連載を始める前に、完結までの道筋を自分で確かめる設計図としても使えます。

初めて書くなら1枚版のテンプレートから、応募が近いなら例文とよくある失敗から読むと早いと思います。

ひと目でわかるポイント

  1. あらすじの中心は起承転結で書いた物語の筋で、応募用なら結末まで書きます
  2. 一行の要約と結末を先に決めると、真ん中が埋めやすくなります
  3. 登場人物は筋に出てくる人だけを、物語の中で何をするかで紹介します
  4. 字数や書式は賞ごとに違います。要項があれば要項に、なければ1枚版から書きます

あらすじに入れる項目

新人賞の多くはあらすじの字数や書式だけを決めていて、何を書くかまでは指定しません。項目を自分で立てるなら、次の並びにしておくと読む側が迷いません。

項目 何を書くか 分量の目安
タイトル・ジャンル・キーワード 作品のタイトル、ジャンル(異世界ファンタジー、学園もの、現代ドラマなど)、読者が探しそうなキーワード三つ四つ それぞれ一行
一行の要約(ログライン) 誰が、何を望み、何に阻まれるのかを一文で 一、二文
セールスポイント この作品が読者に渡す面白さと、似た作品との違い 一段落
登場人物 主人公と、筋を動かす人物。年齢や立場と、物語の中でする役目 一人につき二、三行
物語の筋 始まりから結末まで。起承転結か、部ごとに あらすじの大部分
分量・連載予定 予定の話数、1話あたりの字数、いまある原稿 一、二行
各話のあらすじ(任意) 第1〜5話のように、序盤数話の内容 1話につき一段落

応募先が書式を決めている場合は、そちらがすべてです。たとえば小説すばる新人賞は、あらすじをA4判1枚、40字×30行の縦書きにまとめるよう求めています。新人賞の本文審査に出すときは物語の筋だけを書き、出版社に企画として見せるときや連載の準備で使うときは、上の項目をそろえる、という使い分けもできます。

応募用のあらすじとWeb小説の紹介文

日本語の「あらすじ」には、中身の違う二つの文章が入っています。

ひとつは、なろうやカクヨムの作品ページ、本の裏表紙に載るあらすじです。読むのはこれから作品を選ぶ読者なので、結末は伏せ、「その夜、彼女の前に現れたのは……」のように続きが気になるところで止めます。カクヨムではこの欄を紹介文と呼び、キャッチコピーと組み合わせて見せます。

もうひとつが、新人賞に原稿と一緒に出すあらすじです。梗概とも呼びます。こちらを読むのは下読みや編集者で、作品を最後まで任せられるかを判断する人です。物語がどう終わるかを知らないと判断ができないので、結末まで書きます。どんでん返しがあるなら、それも書きます。「果たして主人公の運命は?」で終わる応募用のあらすじは、結末がまだ決まっていないのだと読まれがちです。

自分のために書くあらすじも、結末まで書いておくほうが役に立ちます。結末が紙の上にあれば、途中に置いた出来事がどこにつながるのかを確かめられるからです。

コピーして使えるあらすじテンプレート

下の枠をそのままコピーして、WordやGoogleドキュメント、メモアプリに貼れば項目が残ります。初めてなら1枚版から始めて、応募するときに応募用へ移してください。

あらすじテンプレート(1枚版)
タイトル:
ジャンル・キーワード:
一行の要約:

[登場人物]
主人公(年齢・立場): 望むもの / 阻むもの
人物2:
人物3:

[物語の筋]
起:
承:
転:
結:
あらすじ・企画書テンプレート(応募用)
[作品情報]
タイトル:
ペンネーム:
ジャンル:
キーワード:
予定の分量: (全___話、1話___字前後 / 応募原稿は___字)
いまある原稿: (第___話まで)

[一行の要約]

[セールスポイント]
この作品の面白さ:
似た作品との違い:
想定する読者:

[登場人物]
主人公(年齢・立場):
- 望むもの:
- 秘密や弱点:
- 物語の中でする役目:
主要人物(年齢・立場): 主人公との関係 / 物語の中でする役目
主要人物(年齢・立場): 主人公との関係 / 物語の中でする役目

[物語の筋]
起:
承:
転:
結:

[第1〜5話のあらすじ]
第1話:
第2話:
第3話:
第4話:
第5話:

応募用に入れていない項目もあります。キャラクターの外見やイメージキャスト、世界観設定の長い説明は、要項が求めるときだけ足せば十分です。設定は、筋を読むのに欠かせない分だけ、筋の中で説明したほうが読みやすくなります。

例文:『黒魔法使いと言われましたが、得意なのは土掘りだけです』のあらすじ

TypeTakの講座実例でたどるウェブ小説連載で書いている作品を、応募用テンプレートで埋めてみます。題材は韓国語で書かれた韓国のウェブ小説で、人物名や原稿は日本語に訳したものです。人物と第1〜3部の出来事は講座で決めたとおりで、結末と予定の分量は講座でまだ決めていないため、この記事の例として決めました。

項目 内容
タイトル 黒魔法使いと言われましたが、得意なのは土掘りだけです
ジャンル・キーワード ファンタジー・学園もの / 勘違いもの、平民主人公、生活魔法、成長
予定の分量 全150話前後、1話5,000字前後(例。韓国のウェブ小説の連載形式に合わせた数字)
一行の要約 古い判定石が「土魔法」を「黒魔法」と告げたせいで、資格だけ取って故郷に帰るつもりだった平民の少年が、王立魔導学院の黒魔法特例入学生になる。
セールスポイント 周りが誤解するほど主人公の評判が上がる勘違いものの笑いに、土塀を直し畑を生き返らせてきた生活魔法が、最後には世界を救う力になる成長を重ねました。強い主人公が正体を隠す話とは逆に、平凡な力をみんなが恐ろしい力だと信じ込む話です。

タイトルの笑いは韓国語の同音にかかっています。「土魔法」と「黒魔法」は韓国語ではどちらも「フンマボプ」と聞こえるので、主人公の土魔法が黒魔法と聞き違えられるところから話が転がります。

登場人物

  • クレイ・ローウェン(平民出身の入学生):ラビエン王国の農村で、母と畑の土を見ながら育ちました。望むのは資格と安定した職で、家族の暮らしを助けること。本当の属性は土魔法なのに、黒魔法使いだと誤解されています。
  • セラフィーヌ・モルデル(黒魔法の教授):クレイが自分の力を「土魔法」と呼ぶのを謙遜だと受け取り、その力を確かめようと危険な試験をやらせ続けます。
  • ルシアン・カルヴェン(貴族のライバル):クレイに怯えながら張り合いますが、ぶつかるたびにクレイの評判を上げてしまいます。
  • ミア・トーレン(友人):クレイの本当の属性を知るただ一人。知らないふりをしながら、誤解が広がるたびに後始末をします。
  • バルカン・レスト(本物の黒魔法使い):最初は、土地を腐らせる黒魔法の痕跡としてだけ姿を見せます。

物語の筋

  • 起:ベルカディア王立魔導学院の入学試験会場。平民だからと見下されていたクレイが判定石に手を置くと、古い判定石は「土」をうまく発音できず、【黒…… 魔……】と告げます。会場は恐怖に包まれ、クレイは弁解する間もなく黒魔法の特例入学生になります。
  • 承:5つの塔のどれも土魔法を教えていない学院で、クレイは最初の研究課題と公開実習を土魔法でこなします。ひびの入った壁を埋め、土のゴーレムで荷物を運ぶたびに、学院は大規模な黒魔法だと震え上がり、セラフィーヌはさらに危険な試験を、ルシアンはさらに無理な勝負を持ちかけてきます。研究室をめぐる対立が大きくなるほどクレイの評判は上がり、真実を知るミアは後始末に追われます。
  • 転:学院の近くで、不自然に腐った土地が見つかります。クレイが土魔法でよみがえらせた土地は数日後にまた腐り、学院はその痕跡を「黒魔法使いクレイ」の仕業だと疑います。誤解が初めて笑いでは済まない危険に変わり、クレイは土地を腐らせる本物の黒魔法使い、バルカンの痕跡を追います。
  • 結(例):クレイは、黒魔法が腐らせた土地は土魔法でしかよみがえらないことを人々の前で示し、バルカンが腐らせようとした王都の土地を守ります。ついに自分は土魔法使いだと打ち明けますが、セラフィーヌは「それなら研究する価値はなおさら高いわね」とかえって喜びます。学院には土魔法を教える6つ目の塔が建ち、クレイはその塔の最初の研究生になります。学生たちは相変わらず、その塔を「黒の塔」と呼んでいます。

例文の筋の四つの段落は、講座のボードに置いた三つの部(序盤の誤解と入学、学院への適応と地位の上昇、本物の黒魔法の痕跡)を文章にしたものです。出来事のカードをすでに並べてあれば、あらすじはカードを文でつなぐだけで書けます。

あらすじの書き方:書く順番

テンプレートの上から埋めていくと、セールスポイントのところで手が止まりがちです。次の順番なら、前に決めたことが次の項目の材料になります。

  1. 一行の要約を書きます。 主人公が誰で、何を望み、何に阻まれるのかが入っていれば十分です。最初は長くてかまいません。全部書き終えてから削ります。
  2. 結末を先に決めます。 主人公は望んでいたものを手に入れるのか、手に入れられないのか、別のものを手に入れるのか。結末が決まると、「転」で何が崩れるべきかが見えてきます。
  3. 起承転結を一段落ずつ書きます。 段落ごとに大きな出来事をひとつと、その出来事のあと主人公の立場がどう変わるかを書きます。場面の描写やセリフは入れません。
  4. 筋に出てきた人物だけを紹介します。 筋を書き終えたら、その中に名前が出た人物だけを登場人物の欄に移します。筋に一度も出てこない人物は、あらすじから外してかまいません。
  5. セールスポイントは最後に書きます。 筋を書き終えたあとなら、この作品の面白さがどこにあるのかを一段落で言いやすくなります。
  6. 声に出して読みます。 初めて読む人が人物の名前や出来事の順番を取り違えないかを確かめます。

よくある失敗

設定の説明から始めてしまう。 世界の歴史や魔法の仕組みを何段落も説明してから主人公が出てくると、読む人は誰の話かわからないまま設定を覚えさせられます。

  • 直す前:ラビエン王国は五つの属性の魔法で成り立つ国で、各属性は王立魔導学院の5つの塔で教えられている。黒魔法はその中でもっとも恐れられる属性で……
  • 直したあと:平民の少年クレイは入学試験で土魔法と判定されるが、古い判定石が「黒魔法」と告げてしまい、黒魔法の特例入学生になる。

設定は、出来事を説明するのに要る瞬間に一行ずつ入れます。「土魔法を教える塔がない」という設定は、「承」でクレイがひとりで土魔法を使うことになる理由として出てきたときが、いちばん読みやすいはずです。

結末を隠してしまう。 先に書いたとおり、応募用のあらすじは結末まで書きます。

  • 直す前:腐った土地の秘密を追うクレイの前に、本物の黒魔法使いが現れるが……
  • 直したあと:クレイは、黒魔法が腐らせた土地は土魔法でしかよみがえらないことを示し、バルカンが腐らせようとした王都の土地を守る。

人物紹介が性格の一覧になっている。 「明るく正義感が強く責任感がある」は、どの主人公にでも当てはまります。人物の欄には、その人物が望むものと、物語の中でする役目を書きます。例文でミアを「優しくて勘のいい友人」ではなく「知らないふりをしながら誤解の後始末をする友人」と書いたのは、そのためです。

出来事の代わりに雰囲気を書いてしまう。 「深まっていく葛藤の中で、二人は互いの本心を知る」は、何が起きたのかを言っていません。誰が何をして、そのせいで何が変わったのかを書きます。

あらすじの文字数の目安

あらすじの字数は、賞ごとにかなり違います。ライトノベル系の新人賞だけを見ても、電撃小説大賞は800字以内、GA文庫大賞は1,000字以内、富士見ノベル大賞は1,200〜2,000字と、公募情報のまとめには載っています。要項は回ごとに変わることがあるので、応募する前に最新の要項で確かめてください。

字数の指定がないときは、上の1枚版から書き始め、相手がもっと詳しく知りたがったら延ばすのが無難です。

字数そのものより気にしたいのは、筋の割合です。あらすじの半分以上が設定や人物紹介なら、筋を書き足し、残りを削ってください。

ログライン・あらすじ・プロットの違い

三つとも同じ物語を指していて、違うのはどこまで詳しく言うかと、誰に見せるかです。

ログライン あらすじ プロット
長さ 一、二文 数百字から数枚 数枚から数十枚
書くこと 主人公、望むもの、阻むもの 結末までの筋、主要人物、セールスポイント 出来事の因果と並べる順番、話ごとの場面
主に使う場面 作品紹介の一行目、キャッチコピーの元 新人賞への応募、企画書、連載の準備 書き手が執筆の前に立てる筋立て

プロットは書き手が自分のために立てるもので、あらすじはそのプロットを他人が読める文章に直したもの、と考えると区別しやすくなります。プロットを長編・エピソード・1話ごとに分けて立てる方法はプロットの書き方にまとめました。映画やドラマの脚本開発ではもっと詳しいトリートメントという文書も使いますが、小説の応募ではまず求められません。

TypeTakであらすじを書く

TypeTakは、エージェントと一緒に書くAI執筆エディタです。人物や出来事を設定の辞典であるワールドにまとめておけば、あらすじの材料はすでに一か所にそろっています。出来事はボードに部と順番どおりにカードで並べ、人物ノードの「望むもの」や「秘密」のセクションは登場人物の紹介に移せます。エージェントにワールドを読んであらすじのページを書いてほしいと頼むと、まず執筆プランをカードで見せ、直したプランどおりに書きます。

よくある質問

あらすじと梗概は同じものですか?

新人賞の要項ではほぼ同じ意味で使われます。どちらも物語の始まりから結末までを短くまとめた文章です。ただ、「あらすじ」はなろうやカクヨムの紹介文や本の裏表紙のように、結末を伏せて読者に向けて書く文章を指すこともあります。応募の書類で「梗概」とあれば、結末まで書くほうです。

新人賞のあらすじは結末まで書くべきですか?

書きます。下読みや編集者は、結末まで知ったうえで作品を判断します。結末を伏せるのは、作品ページの紹介文や裏表紙のあらすじのほうです。

連載前に結末が決まっていないときはどうすればいいですか?

決められるところまで、せめて主人公が最後に望んでいたものを手に入れるかどうかだけでも書いておきます。連載しながら変わってもかまいません。結末を変えたらあらすじも直しておくと、途中に置いた出来事が新しい結末と食い違っていないかを確かめやすくなります。

あらすじは何文字くらいが目安ですか?

賞の要項に従います。ライトノベル系の新人賞でも、800字以内から2,000字程度まで幅があります。指定がなければ、起承転結を一段落ずつ書いた1枚版の長さから始めてください。

なろうやカクヨムのあらすじ欄も同じように書けばいいですか?

いいえ。作品ページのあらすじや紹介文は読者に読み始めてもらうための文章なので、結末は書かず、主人公の置かれた状況と、この作品で何が楽しめるかを短く見せます。応募用のあらすじを書いておけば、そこから「起」と「承」の頭だけを抜き出すと紹介文の下書きになります。

参考資料

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