「言った」の言い換え200選|小説の台詞につける動詞を感情別に
「言った」の言い換えとは、台詞のあとの地の文で、その台詞がどう口にされたかを伝える動詞のことです。囁いた、吐き捨てた、認めた、呟いた。話し方そのものが意味を持ち、台詞の言葉だけでは伝わらない時に役立ちます。ただ多くの場合、いちばんいいのは飾らない「言った」です。読者がほとんど気に留めないからです。
この記事では、言い換えを200、働きごとに分けて載せています。五十音順の一覧を眺めるより、その台詞に合う一語を早く見つけられます。あわせて、「言った」のままでいい場面、動詞の代わりに動作を置く方法、台詞と地の文の書き方もまとめました。
ひと目でわかるポイント
- ほとんどの台詞は「言った」「尋ねた」で足ります。読者は読み流すので、注意が台詞そのものに残ります
- 別の動詞を使うのは、話し方が意味を変えるのに、台詞の言葉だけではそれが見えない時です
- 「言った」のいちばんの代わりは、何もつけないことである場合が多いです。誰の台詞か分かるなら、動作を置くか、何も置かない
- 日本語は語尾や一人称で話し手が分かるので、英語の小説よりさらに「言った」を減らせます
「言った」で足りる理由
読者は「言った」を句読点に近いものとして読みます。目はそこを素通りして、次の台詞に移ります。長い会話ではそれが望ましい形です。働くのは鉤括弧の中の言葉です。
凝った動詞は、それ自体に目を引きます。登場人物が次々に言い返し、叫び、述べ、口を挟むページは、書き手が力みすぎているように読めます。アメリカの作家エルモア・レナードは「文章のための十の規則」(2001年)で、台詞を運ぶ動詞は「said」以外使わない、副詞もつけない、とはっきり書きました。厳しすぎると感じる人も多いですが、出発点としては役に立ちます。
日本語にはもうひとつ有利な点があります。「〜だぜ」「〜ですわ」「俺」「僕」といった語尾や一人称で、誰が話しているか読者に伝わることが多いのです。ウェブ小説では台詞だけが何行も続くことも珍しくありません。話し手が分かる限り、地の文を挟まなくてもかまいません。
別の言葉が合う時
話し方が、読者に必要な情報である時に、別の動詞を使います。
- 声の大きさが台詞から読み取れない時。紙の上では落ち着いて見えるのに、実は叫んでいる台詞など。
- 調子が変わる時。冗談に見えて実は責めている台詞、本心ではない謝罪。
- 囁きや独り言 で、その場の他の人物には聞こえていない時。
- 質問と答えで、「尋ねた」「答えた」がリズムをはっきりさせる時。
台詞の言葉がすでに伝えているなら(「出ていけ!」)、動詞まで同じことを言う必要はありません。「『出ていけ!』と彼女は叫んだ」は、同じことを二度言っています。
同じ台詞に5つの動詞
閉館後の学院図書館で、ある生徒が見つかる場面の台詞です。
「何も探してない」とクレイは言った。 「何も探してない」とクレイは呟いた。 「何も探してない」とクレイは言い返した。 「何も探してない」とクレイは認めた。 「何も探してない」とクレイは嘘をついた。
「言った」は中立です。「呟いた」だとふてくされた感じになります。「言い返した」は身構えています。「認めた」はここでは妙です。台詞が何かを否定しているので、かえって反対のことを白状しているように読めます。「嘘をついた」は真相を読者に直接渡します。相手の人物より先に読者に知らせたい時に使えます。動詞ひとつで、場面が何についての場面なのかが変わります。これが判断の基準です。何も変わらないなら「言った」にします。
「言った」の言い換え200
グループごとに、使いどころを短く添えました。過去形の地の文で使う形(〜た)で載せています。必要なグループをメモにコピーして使ってください。
1. 声を大きく
叫んだ、怒鳴った、喚いた、声を張り上げた、大声を出した、吠えた、絶叫した、呼びかけた、呼んだ、声をかけた、がなった、叫び返した、一喝した、高らかに言った、遠くから叫んだ、悲鳴を上げた、声を上げた、号令をかけた
「呼びかけた」「遠くから叫んだ」は距離を表す言葉で、怒りではありません。「一喝した」は短く強い叱責です。
2. 声を小さく
囁いた、呟いた、小声で言った、声を潜めた、耳打ちした、ぼそりと言った、ぼそぼそと言った、もごもごと言った、ため息まじりに言った、独りごちた、口の中で言った、唇だけで言った、かすれた声で言った、低い声で言った
「唇だけで言った」は声が出ていないということです。「独りごちた」はやや文語的なので、作品の文体に合わせて選びます。
3. 怒り
吐き捨てた、言い放った、毒づいた、噛みついた、食ってかかった、詰め寄った、詰った、責めた、なじった、罵った、叱った、叱りつけた、咎めた、言い返した、やり返した、声を荒らげた、唸った、凄んだ、吐き出すように言った、怒りをぶつけた、苛立たしげに言った
「吐き捨てた」「罵った」は強い言葉です。本当に敵意のある台詞のためにとっておきます。「叱った」「咎めた」は、相手より立場が上である感じが出ます。
4. 不安・緊張
どもった、口ごもった、言いよどんだ、言葉に詰まった、声を震わせた、震える声で言った、うわずった声で言った、声が裏返った、あえいだ、息を呑んで言った、思わず口走った、口を滑らせた、やっとのことで言った、絞り出すように言った、おずおずと言った、消え入りそうな声で言った
「口走った」「口を滑らせた」は、止める前に出てしまった言葉に使います。「絞り出すように言った」は、短い台詞をやっと口にする時に合います。
5. 悲しみ
しゃくりあげた、嗚咽した、鼻をすすった、嘆いた、こぼした、泣き言を言った、声を詰まらせた、涙声で言った、力なく言った、沈んだ声で言った、抑揚のない声で言った、ぽつりと言った
「ぽつりと言った」「抑揚のない声で言った」は、場面を大げさにせずに声の様子を伝えられるので便利です。
6. 喜び・笑い
笑った、くすくす笑った、吹き出した、けらけら笑った、笑い飛ばした、おどけた、茶化した、からかった、冗談めかして言った、はしゃいだ、弾んだ声で言った、歓声を上げた、喜んだ、浮かれた声で言った、鼻歌まじりに言った、歌うように言った、得意げに言った、上機嫌で言った
「笑った」は台詞につけられるかどうか意見が分かれます。短い台詞なら問題ありませんが、長い台詞なら「彼女は笑った。」と地の文を分けたほうが読みやすくなります。
7. 質問
尋ねた、訊いた、問うた、問いかけた、聞き返した、問い詰めた、問いただした、探りを入れた、確かめた、水を向けた、恐る恐る尋ねた、独り言のように問うた
「尋ねた」は質問の「言った」です。ほとんどの場面でこれを使います。「水を向けた」は、相手に話させようとする問いかけに合います。
8. 答え・同意
答えた、応じた、返した、返事をした、認めた、頷いた、同意した、賛成した、請け合った、引き受けた、折れた、譲った、繰り返した、復唱した、相づちを打った、了承した
「頷いた」は話し方というより動作なので、「彼は頷いた。」と地の文を分けるのが自然です。「繰り返した」「復唱した」は、直前の言葉をなぞる台詞に使います。
9. 反論・拒否
反論した、異を唱えた、抗議した、否定した、打ち消した、突っぱねた、断った、拒んだ、言い張った、食い下がった、譲らなかった、主張した、反発した、警告した、釘を刺した
「言い張った」「食い下がった」は、一度言ったことをもう一度言う時に合います。「釘を刺した」は、先回りして注意する台詞です。
10. 遮る・続ける
遮った、口を挟んだ、割って入った、横から言った、言い添えた、付け加えた、続けた、言葉を継いだ、話を戻した、締めくくった、言い終えた、言いかけてやめた、言葉を切った、口をつぐんだ、切り出した
「言いかけてやめた」「言葉を切った」は、途中で終わる台詞に使います。台詞は多くの場合「……」か「——」で終わります。
11. 説明・伝達・命令
説明した、告げた、伝えた、述べた、宣言した、言い切った、断言した、指摘した、知らせた、報告した、補足した、強調した、命じた、言いつけた、指示した、促した、急かした、頼んだ、懇願した、すがった、提案した、勧めた、助言した、申し出た、約束した、なだめた
「指摘した」は、聞き手が気づくべきだったという含みがあります。「宣言した」「述べた」は改まった響きがあり、家族の場面では皮肉に聞こえます。
12. 秘密・嘘・口調
打ち明けた、白状した、明かした、嘘をついた、とぼけた、しらばっくれた、ほのめかした、匂わせた、当てこすった、皮肉った、嘲った、鼻で笑った、挑発した、猫なで声で言った、甘えた声で言った、真顔で言った、間延びした声で言った
「真顔で言った」は、表情を変えずに言う冗談に使います。「猫なで声で言った」は色が強いので、一章に一度くらいで十分です。
動詞の代わりに動作を置く
台詞の前後に短い動作を置くと、「言った」をつけなくても誰の台詞か分かります。しかも、話しながらその人物が何をしているかも見せられます。
動詞:「遅いよ」とミアは怒って言った。 動作:ミアは本から顔を上げなかった。「遅いよ」 動詞:「説明させてくれ」とクレイは慌てて言った。 動作:クレイはズボンで手のひらを拭った。「説明させてくれ」 動詞:「……分かった」とルシアンはしぶしぶ言った。 動作:ルシアンはしばらく壁を見つめていた。「……分かった」
動作の文は独立した一文なので、句点(。)で終えてから台詞に入ります。
二人の会話なら、流れができたあとは動詞も動作もない台詞を何行か続けてかまいません。語尾で話し手が分かれば、なおさらです。読者が迷わないよう、四、五行に一度は誰の台詞か分かる手がかりを入れます。
台詞と地の文の書き方
鉤括弧・三点リーダー・ダッシュの決まりは小説の記号の使い方に詳しくまとめています。ここでは要点だけ挙げます。
- 台詞の最後に句点はつけない。 「帰る」と彼女は言った。(「帰る。」とはしない)
- 「と」で受けるか、文を分けるか。 「帰る」と彼女は言った。/「帰る」彼女はそう言って立ち上がった。
- 疑問符・感嘆符のあとは、鉤括弧の中に収めて閉じます。「帰るの?」と彼女は尋ねた。
- 地の文が台詞の前に来る時 は、その文を句点で終えます。彼女はコートを手に取った。「帰る」
よくある失敗
台詞を繰り返す副詞をつける。 「『大嫌い』と彼は怒って言った」。台詞がもう伝えています。副詞は削ります。
動作を発話の動詞のように使う。 「『もちろん』と彼女は微笑んだ」。言葉は微笑めません。「彼女は微笑んだ。『もちろん』」と動作の文にします。日本語では許容されることも多いですが、続くと気になります。
台詞ごとに動詞を変える。 言い返した、答えた、応じた、反論した、と並ぶページは類語辞典のように読めます。「言った」を混ぜ、動詞のない台詞も残します。
二人の会話で、すべての台詞に動詞をつける。 誰の台詞か読者が分かったあとは、毎回の「と言った」が読む速度を落とします。
TypeTakで台詞に合う一語を見つける
TypeTakは、エージェントと一緒に書くAI執筆エディタです。会話文を直す時に欲しいのは、その場面に合う一つの書き方と、同じ動詞が数行おきに出てこないページです。
- 一文の別の書き方が見られる。 カーソルを文に置いて、カーソルメニューから別の言い回しを選びます。候補がいくつか出るので、自分らしいものを残します。
- 繰り返している動詞に気づける。 フィードバックの文体カードが使いすぎている言葉を挙げ、原稿の中の該当箇所をすべて示します。「呟いた」が続いていれば、すぐに分かります。
- 人物ごとの話し方を保てる。 フィードバックは、その場面を人物の設定とも照らし合わせます。ある人物の話し方に合わない台詞があれば、場面の横に出てきます。
「言った」をどれくらい使うかは、書き手と作品のジャンルが決めることです。場面の視点をどう選ぶかは、三人称視点の書き方で比べています。
よくある質問
「言った」の言い換えにはどんな言葉がありますか?
効果によって、囁いた、叫んだ、答えた、反論した、認めた、呟いた、吐き捨てた、などがあります。上に200を12のグループに分けて載せました。変化をつけるためではなく、話し方について何を伝えるかで選びます。
「言った」を何度も使うのは悪いことですか?
たいていは問題ありません。読者は「言った」を読み流すので、他の言葉ほど繰り返しが目立ちません。気になるのは、すべての台詞に動詞がついていることです。誰の台詞か分かるなら外し、動作で変化をつけます。
台詞のあとに「と言った」をつけなくてもいいですか?
話し手が分かるなら、つけなくてかまいません。日本語は語尾や一人称で人物を書き分けやすいので、ウェブ小説では台詞だけが続く書き方もよく見られます。分かりにくくなる箇所にだけ手がかりを入れます。
「尋ねた」の言い換えは?
訊いた、問うた、問いかけた、聞き返した、問いただした、探りを入れた、などがあり、それぞれ調子が違います。ただ「言った」と同じく、「尋ねた」が中立の基本形で、ほとんどの場面で使えます。
「微笑んだ」を台詞の動詞として使えますか?
意見が分かれます。日本語では「と微笑んだ」も広く見られますが、言葉は微笑めないので、続くと不自然になります。「彼女は微笑んだ。」と動作の文を分けるのが無難です。
参考資料
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→韓国のウェブ小説『黒魔法使いと言われましたが、得意なのは土掘りだけです』1作を、TypeTakで構想から連載直前まで仕上げていく過程をそのままたどります。