ご都合主義とは?小説で「都合のいい展開」にしない方法と、プロットホールの見つけ方
ご都合主義とは、話を進めるために作者の都合で出来事を起こしたり解決したりすることです。物語の中に理由がないまま、主人公に都合のいい偶然や能力が出てくると、読者は「それはさすがに都合がよすぎる」と感じて物語から離れてしまいます。
この記事では、ご都合主義の意味となぜ嫌われるのか、よくある三つの形(偶然・都合のいい能力・急な心変わり)を、直す前と直したあとの例でまとめました。後半では、ご都合主義と隣りあう「プロットホール」、つまり設定の矛盾を原稿から探す順番と、すでに公開した話の直し方、コピーして使えるチェック表を紹介します。
ひと目でわかるポイント
- ご都合主義は「物語の中に理由がない、作者に都合のいい展開」です。偶然や幸運そのものが悪いわけではありません
- 嫌われるのは、主人公が自分で選んだり払ったりしないまま問題が片づくからです
- 直し方の基本は、都合のいい出来事の理由を前の話に一行仕込むことです。後から説明を足すより、前に置くほうが自然に読めます
- 書いているうちに設定が変わり、前の話が古いまま残るとプロットホールが生まれます。変えた設定から書き出すと、探す場所がしぼれます
ご都合主義の意味
ご都合主義は、もともと「その場その場の都合で態度や方針を変えること」を指す言葉です。創作の感想で使われる時は、「作者が話を進めたいから起きた展開」という意味になります。
| ご都合主義 | プロットホール(設定の矛盾) | 伏線のある偶然 | |
|---|---|---|---|
| 何が起きているか | 理由のない出来事が、主人公に都合よく起こる | 前に決めた設定と、あとの話が食い違う | 偶然に見えるが、前に理由が置いてある |
| 読者の反応 | 「都合がよすぎる」 | 「前と話が違う」 | 「そういうことか」 |
| 例 | 危機の瞬間、今まで一度も出てこなかった力に目覚める | 6話では塔が五つ、70話では六つ | 危機で使う力が、前に小さく一度だけ見せてある |
| 直し方 | 理由を前に仕込む | どちらか片方に合わせる | 直さなくていい |
三つは別のものですが、つながっています。ご都合主義の解決は、前に決めた設定を無視することが多く、その時プロットホールも一緒に生まれます。反対に、偶然でも理由が前に置いてあれば、それはご都合主義ではなく伏線です。伏線の張り方は伏線とはにまとめています。
ご都合主義は何が悪い?
「ご都合主義 何が悪い」と検索する人は多いのですが、実はご都合主義がすべて悪いわけではありません。ラブコメの偶然の出会いや、コメディの勘違いの連鎖は、読者も最初から「そういう話」として楽しんでいます。
嫌われるのは、次の二つが重なった時です。
- 主人公が何も選んでいない。 危機が主人公の判断や努力ではなく、外から降ってきた幸運で片づくと、読者がそれまで手に汗握っていた時間が無駄になります。
- その物語のルールを破っている。 魔法には代償がある、と言っていた物語で代償なしの魔法が出ると、読者はこれから先のルールも信じられなくなります。
逆にいえば、主人公が何かを選んで払っていて、物語のルールの中で起きていれば、少しくらい運がよくても読者は気にしません。主人公だけがすべてに恵まれる問題は、キャラクター側から見たメアリー・スーとはでも扱っています。
ご都合主義の三つの形と直し方
例はTypeTakのWeb小説講座の作品『黒魔法使いと言われましたが、得意なのは土掘りだけです』です。直す前の展開と話数は、説明のためにこの記事で作った例で、直したあとの設定は講座の設定に合わせています。
1. 偶然:ちょうどいい時に、ちょうどいいものが来る
危機の場面で、助けや手がかりがたまたま現れる形です。一度なら読者も許しますが、大事な場面で何度も続くと目立ちます。
- 直す前:公開実習で崩れかけた壁の前、たまたま通りかかった学院長がクレイの土魔法を見て、誤解を一言で解く。
- 直したあと:学院長は通りかからない。代わりに、2話から秘密を知っているミアが動く。ミアがその場にいる理由は、42話で「実習の前にゴーレムを使わないで」とクレイを止めていたから。助けは偶然ではなく、前からいた人物の選択になる。
偶然を残したい時は、「偶然で始まって、選択で終わる」形にすると読者は納得します。出会いは偶然でも、そのあとどうするかは人物に選ばせます。
2. 都合のいい能力:困った時だけ新しい力が出る
主人公が追いつめられた瞬間に、それまで影も形もなかった能力や道具が出てくる形です。Web小説では「覚醒」や「隠しスキル」として出やすく、感想欄でいちばん指摘されやすい形でもあります。
- 直す前:140話の山場、腐った土地を前にしたクレイが、突然「土を浄化する魔法」に目覚めて一晩で土地をよみがえらせる。
- 直したあと:34話で、クレイが学院の花壇の土を手でもんで元に戻す場面を小さく入れておく(その土は三日後にまた黒ずむ)。140話では、その小さな力を、ルシアンたちが運んだ土にくり返し使う。新しい力ではなく、前から見せていた力を大きく使う。
力そのものより、その力を使うために主人公が何を払うかを書くと、さらに説得力が出ます。上の例なら、クレイは力を使いすぎて倒れ、141話で代償を払います。
3. 急な心変わり:人物が話の都合で性格を変える
敵だった人物が急に味方になったり、頑固だった人物があっさり折れたりする形です。人物の気持ちが変わる理由が書かれていないと、作者が動かしたように見えます。
- 直す前:ずっとクレイを敵視していたルシアンが、140話で突然「お前を認める」と言って協力する。
- 直したあと:41〜45話の公開実習で、ルシアンは自分の無理な魔法で壁を崩し、それをクレイに防がれている。その後の話で、ルシアンが一人で土を調べる場面を短く何度か入れる。140話、ルシアンは何も言わずに腐った土をかごに入れて運んでくる。言葉で認めなくても、行動が変わる理由はもう積んである。
必然性を仕込む三つのコツ
ご都合主義を避けるとは、言いかえると「必然性」を前の話に置いておくことです。
- 解決に使うものは、危機より前に一度見せる。 力、道具、人物、ルール。どれも、山場で初めて出すのではなく、関係のない場面でさりげなく先に出しておきます。
- 主人公に払わせる。 時間、体力、信用、大事なもの。何かを失って手に入れた解決は、運がよくてもご都合主義には見えません。
- 簡単な解決をふさぐ理由を、物語のルールにする。 「なぜ最初からそうしなかったの?」と聞かれそうな時は、それができない理由を一行、世界の決まりとして書いておきます。例:「判定石は王家の宝で、年に一度、入学試験の日にしか出さない」。これで、クレイの誤解が次の試験まで続く理由が、作者の都合ではなく世界の決まりになります。
プロットホールの見つけ方
ご都合主義と並んで感想欄で指摘されやすいのが、プロットホール(設定の矛盾・設定ミス)です。物語が自分で決めた設定や時間、人物が知っていることと、あとの話が食い違う場所のことです。
よくある形は四つです。
- 設定の食い違い。 6話で「ベルカディア王立魔導学院の塔は五つで、土魔法を教える塔はない」としたのに、70話でセラフィーヌが「六つの塔の教授が集まった」と言う。
- 知るはずのないことを知っている。 75話でルシアンが「お前、故郷で畑を耕してただけだろ」と言うが、クレイが畑の話をしたのはミアだけ。
- 時間の計算が合わない。 3話で故郷まで馬車で五日と書いたのに、60話でクレイが週末の二日で帰省して戻る。
- 出したものが消える。 12話で奨学金の条件に「毎学期の研究報告」を出したのに、その後一度も報告の話が出ない。
原稿からは、何話かたまったところで、この順番でさかのぼって探します。
- 変えた設定を書き出す。 名前・数字・ルール・関係を途中で変えたら、一覧にします。矛盾のほとんどは、変える前の設定が前の話に残っているものです。
- 設定表と原稿を照らしあわせる。 人物・場所・能力ごとに、決めた値と原稿に出てくる値を比べます。設定表がまだないなら、キャラクター設定表から作っておくと次から楽です。
- 人物ごとに「知った話」を書く。 秘密や大事な情報ごとに、誰が何話で知ったかを一行ずつ書きます。
- 時系列を並べる。 日付・移動時間・季節・年齢が出てくる場面だけを抜き出して順に並べ、計算が合うかを見ます。
- 一話一行で並べ直す。 書き終えた話を一話一行に要約して並べると、本文では見えなかった抜けが見えます。大きく見せたのにその後出てこないものを探します。
- 初めて読む人に見せる。 作者は頭の中の設定で穴を埋めながら読みます。設定を知らない人の「これはなぜ?」が、いちばん正確な穴のリストです。
すでに公開した話の直し方
見つけた穴やご都合主義は、大きさと、もう読者が読んだかどうかで直し方が変わります。
| 直し方 | いつ使うか | 例 |
|---|---|---|
| 前に一行仕込む | まだ公開していない原稿、または書籍化の改稿 | 序盤に「判定石は年に一度しか出さない」を入れる |
| あとで理由を見せる | すでに読者が読んだ話 | 76話で、ルシアンが入学書類を盗み見ていたことを明かす |
| 前の話を改稿する | 穴が大きく、あとから説明するとかえって不自然な時 | 70話の「六つの塔」を「五つの塔」に直し、そのことを知らせる |
| そのままにする | 読者が気にしないほど小さく、話に影響がない時 | 一日ずれた曜日など |
一度読んだ読者は改稿に気づかないので、Web小説では二つ目の方法がいちばんよく使われます。前の話を直した時は、後書きや活動報告などで何を直したかを短く知らせると、読者が混乱しません。投稿サイトごとに改稿の扱いや表示が違うので、使っているサイトの案内を先に確認してください。
コピーして使えるご都合主義・プロットホールのチェック表
下の枠をコピーしてメモ帳や文書に貼り、山場を書く前と、設定を変えるたびに埋めてください。「済み」に印のない行が、残っている穴です。
[山場の解決] 何で危機を解くか: それを前に見せた話: 主人公が払うもの: 簡単な解決をふさぐ理由: [変えた設定1] 何を変えたか: 変える前: 変えたあと: 変える前の設定が出てくる話: 直し方:(前に仕込む/あとで見せる/前の話を改稿/そのまま) 直す話: 済み: [変えた設定2] 何を変えたか: 変える前: 変えたあと: 変える前の設定が出てくる話: 直し方: 直す話: 済み: [誰がいつ知ったか] 情報: 知っている人物/知った話: 知っている人物/知った話: [時系列] 場面/日付・季節: 場面/日付・季節: 移動/かかる時間:
よくある失敗
説明を足して穴をふさぐ。 穴が見えると、地の文で長く言い訳したくなります。読者は説明の量より、場面の中の根拠一つで納得します。
- 直す前:実は判定石はとても貴重な宝で、気軽に持ち出せるものではなく、王家の許可が必要で、その手続きはひどく面倒だったので、誰も再検査を申し出なかったのである。
- 直したあと:「再検査? 判定石が出てくるのは来年の入学試験の日ですよ」試験官は書類を閉じた。
穴を一つふさいで、新しい穴を作る。 足した理由も、前後と合っていなければなりません。
- 直す前:ルシアンが畑の話を知っている理由を「ミアがうっかり話した」にする。すると、秘密を守っていたミアがなぜ話したのかという新しい穴ができる。
- 直したあと:ルシアンが入学書類を盗み見たことにする。クレイの弱みを探しているという、もともとの性格と合う。
すべての穴をふさごうとする。 読者が気にしない小さなずれまで直そうとして次の話が遅れると、そのほうが損です。物語のルールと人物の知っていることに関わる穴から直してください。
TypeTakで設定の矛盾を見つける
TypeTakは、エージェントと一緒に書くAI執筆エディタです。話を公開する前に矛盾を見つけ、見つけた矛盾をどこで直すかを決めるために使います。
- 公開前に、設定と食い違う箇所を指摘してくれる。 一話書き終えてフィードバックを受けると、整合性のカードが、書いておいた設定と食い違う箇所を指摘します。塔の数のように値が変わったところも、人物が知るはずのないことを言っているところも、ここに出ます。
- 原稿全体から同じ設定を探せる。 「原稿で学院の塔がいくつと書いてあるか全部探して」のようにエージェントに聞くと、原稿と設定を読んで、何話に何と書いてあるかを答えます。
- 誰がいつ知ったかが残る。 人物がいつ何を知ったかが話数の順に積み重なり、変えた設定は前はいつ何だったかを見直せるので、「知るはずのないことを知っている」穴を防ぎやすくなります。
指摘された箇所を直すか、そのままにするかは書き手が決めます。
よくある質問
ご都合主義とはどういう意味ですか?
話を進めるために、作者の都合で出来事を起こしたり解決したりすることです。物語の中に理由がないまま、主人公に都合のいい偶然や能力が出てくる展開を指して使われます。
ご都合主義の何が悪いのですか?
主人公が何も選ばず、何も払わないまま問題が片づくと、読者がそれまで追ってきた緊張が無駄になるからです。また、物語のルールを破る解決が出ると、その先のルールも信じられなくなります。理由が前に置いてあれば、偶然や幸運そのものは悪くありません。
ご都合主義にならない小説の書き方は?
解決に使う力や人物、道具を、危機より前に一度見せておくことです。主人公に何かを払わせ、簡単な解決ができない理由を世界の決まりとして書いておくと、都合のいい展開には見えにくくなります。
プロットホールとは何ですか?
物語が自分で決めた設定や時間、人物が知っていることと、あとの話が食い違う場所です。英語ではplot holeといい、日本語では設定の矛盾や設定ミスとも呼ばれます。
感想欄で矛盾を指摘されたらどうすればいいですか?
まず、本当に矛盾なのか、わざと置いたずれなのかを確かめます。わざとなら答えを先に言う必要はありません。矛盾なら、公開済みの話は次の話で理由を見せる方法を先に考え、前の話を直したら後書きや活動報告で何を直したかを知らせます。
参考資料
- ご都合主義
- ピクシブ百科事典「ご都合主義」
- プロットホール
- Wikipedia — Plot hole
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実例でたどるウェブ小説連載
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