三幕構成とは|七つのターニングポイントと字数の目安、コピーして使えるテンプレート

三幕構成とは、物語を、問題が生まれる始まり(第一幕)、主人公がその問題とぶつかる中盤(第二幕)、問題が決着する終わり(第三幕)の三つに分ける考え方です。役に立つのは、幕と幕のあいだにあるターニングポイントのほうです。物語の向きが変わり、主人公がもう引き返せなくなる場面のことです。

この記事では、それぞれの幕で何が起きるか、多くの書き手が使う七つのターニングポイント、それが10万字や12万字の小説のどこに来るかをまとめました。コピーして使えるテンプレート、一本の長編に当てはめた例、ほかの構成との比べ方も載せています。

ひと目でわかるポイント

  1. 第一幕が全体の約4分の1、第二幕が約半分、第三幕が約4分の1です
  2. 幕と幕はターニングポイントでつながります。一つ目で主人公は物語から降りられなくなり、二つ目で結末へ向かいます
  3. 第二幕を真ん中で分けるミッドポイントを置くと、中だるみをいちばん防ぎやすくなります
  4. 割合は目安です。Web小説や一部のジャンルでは、一つ目の転換がずっと早く来ます

三幕構成とは

物語には始まり、中間、終わりがあるという考えは、アリストテレスの『詩学』までさかのぼります。いまの三幕構成のもとになったのは主に映画の脚本術で、とくにシド・フィールドの『Screenplay』(1979年、邦訳『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』)です。フィールドは脚本を設定、対立、解決の三つに分け、そのあいだに二つのプロットポイントを置く「パラダイム」を示しました。

幕 全体に占める割合 起きること 読者が抱く問い
第一幕 設定 約25% 主人公とその世界を見せる。きっかけの事件がそれを壊し、主人公は問題に向き合うと決める どうするのか?
第二幕 対立 約50% 主人公は目標を追い、障害にぶつかり、状況は悪くなっていく。真ん中で何かが変わる 勝てるのか?
第三幕 解決 約25% いちばん悪い時を越えて、主人公が最後の勝負に出る。クライマックスが物語の中心の問いに答える どう終わるのか?

この中心の問いは、セントラルクエスチョンとも呼ばれます。「ハルとは誰か。千夏は父に逆らってでも祖母の頼みを果たせるか」のように、物語の最初に生まれて、クライマックスでやっと答えが出る問いです。

七つのターニングポイント

三幕を支える場面として、多くの書き手が七つを使います。ピンチポイントはラリー・ブルックスの『Story Engineering』(2011年)から広まった言葉で、残りはたいていの三幕構成で共通しています。

  1. きっかけの事件(約10%)。 主人公の日常を壊す出来事です。インサイティング・インシデントとも呼ばれます。
  2. 第一プロットポイント(約25%)。 主人公が物語に乗り出します。家を出る、依頼を引き受ける、仕事に就く。ここで第一幕が終わります。
  3. 第一ピンチポイント(約37%)。 敵や大きな脅威が何をできるのかを、もう一度見せる場面です。何がかかっているのかがはっきりします。
  4. ミッドポイント(約50%)。 秘密が明かされる、立場がひっくり返る。主人公は受け身から攻めに転じたり、本当の目標が何かを知ったりします。
  5. 第二ピンチポイント(約62%)。 圧力が強まります。脅威がもう一度、前より近くで力を見せます。
  6. 第二プロットポイント(約75%)。 いちばん低いところ、あるいは最後の対決を可能にする発見です。ここで第二幕が終わります。
  7. クライマックス(約90%)。 最後の対決です。中心の問いに答えが出て、短い結末が続きます。

三幕構成の字数の目安

それぞれのターニングポイントが、よくある三つの長さのどこに来るかをまとめました。数字は丸めてあります。原稿用紙の枚数は、400字詰め1枚を400字として単純に割ったものです。改行や会話文があると、実際の枚数はこれより多くなります。

ターニングポイント 割合 10万字(原稿用紙250枚) 12万字(原稿用紙300枚) 30万字(1話3,000字で100話)
きっかけの事件 10% 1万字 1万2,000字 3万字(10話)
第一プロットポイント(第一幕の終わり) 25% 2万5,000字 3万字 7万5,000字(25話)
第一ピンチポイント 37% 3万7,000字 4万4,400字 11万1,000字(37話)
ミッドポイント 50% 5万字 6万字 15万字(50話)
第二ピンチポイント 62% 6万2,000字 7万4,400字 18万6,000字(62話)
第二プロットポイント(第二幕の終わり) 75% 7万5,000字 9万字 22万5,000字(75話)
クライマックス 90% 9万字 10万8,000字 27万字(90話)

いま書いている原稿がどの幕まで来たかは、文字数カウントに原稿を貼り、目標の分量に全体の字数を入れると、何%まで来たかで確かめられます。ジャンルごとの長さの目安は小説の文字数の目安にまとめています。

コピーして使える三幕構成テンプレート

メモアプリや文書にコピーして使ってください。一行に一、二文ずつ埋めて、あとからその下に場面を足していけます。

三幕構成テンプレート
[作品]
タイトル:
目標の分量:(___字/___話)
中心の問い:(クライマックスが答える問い)

[第一幕 設定(約25%)]
始まり:(主人公のふだんの世界と、そこに足りないもの)
きっかけの事件(約10%):(それを壊す出来事)
反応:(主人公がどう抵抗し、ためらうか)
第一プロットポイント(約25%):(主人公が心を決め、もう引き返せなくなる場面)

[第二幕 対立(約50%)]
新しい世界:(主人公がいま置かれている場所と、目標への最初の挑戦)
第一ピンチポイント(約37%):(敵や脅威に何ができるか)
ミッドポイント(約50%):(目標を変える秘密やどんでん返し)
高まる圧力:(ミッドポイントのあと、何が難しくなるか)
第二ピンチポイント(約62%):(脅威が迫ってくる)
第二プロットポイント(約75%):(いちばん低いところ、または結末を可能にする発見)

[第三幕 解決(約25%)]
最後の勝負:(主人公の最後の作戦)
クライマックス(約90%):(対決と、中心の問いへの答え)
結末:(主人公とその世界の何が変わったか)

三幕構成の例

TypeTakの作法記事のために作った長編『タエの道路地図』(全30章、約12万字)を三幕に当てはめてみます。前橋の父の金物店で、大人になってからずっと帳場に座ってきた三浦千夏(32歳)が、祖母タエの遺骨と古い道路地図を持って、父の反対を押し切り、島根の漁港まで車で向かう話です。章の番号は、この記事の例として決めたものです。

ターニングポイント 章 起きること
きっかけの事件 第2章 弁護士が千夏に封筒を渡す。中には、タエの道路地図と、島根の浜瀬で撮った写真と、遺骨をそこへ連れていってほしいという手紙
第一プロットポイント 第6章 千夏は父に黙って、夜明けにタエの軽自動車で出発する。後部座席には、16歳の従妹りんが隠れている
第一ピンチポイント 第9章 父の和夫が電話で「母さんが島根に行ったことなんかない」と言う。地図には、浜瀬の民宿の領収書が六月ごとに挟まっている
ミッドポイント 第15章 浜瀬で、写真の女性、浜田ハルが写真を見て戸を閉める。千夏は700キロ走ってきたのに、事情を知るただ一人が口を開かない
第二ピンチポイント 第20章 和夫が遺骨を連れ戻しに浜瀬まで来る
第二プロットポイント 第23章 ハルが本当のことを話す。自分は和夫の生みの母で、タエが和夫を育てた。それを聞いた和夫は出ていく
クライマックス 第27〜29章 千夏は初めて自分で決める。和夫が来ても来なくても、明日、ハルと一緒に防波堤から散骨する。和夫は来る
結末 第30章 千夏は高速道路を走って帰る。助手席には和夫が座っている

第一プロットポイントは第6章、全体の20%ほどで、目安の25%より少し早めです。ミッドポイントはちょうど真ん中に来て、第三幕(第24〜30章)は全体の4分の1ほどです。二つのピンチポイントは、どちらも父の和夫です。一度目は電話で、二度目は本人が来ます。主人公を阻むのが悪役ではなく身近な人である時は、ピンチポイントがその人のいちばん強く押してくる場面になります。

三幕構成と起承転結、ほかの構成との違い

ほかの構成の多くは、三幕の中に収まるか、三幕を別の切り方で分けたものです。

構成 分ける数 三幕構成との関係
起承転結 四つ 起・承・転・結。葛藤より流れの転換で動くので、三幕にはきれいに重なりません。いちばん大きな変化は三つ目の「転」に来ます
序破急 三つ 雅楽や能から来た、緩急を言う三段の考え方です。三幕構成が出来事の役目で分けるのに対し、序破急は場面の速さで分けます
四幕構成 四つ 第二幕をミッドポイントで二つに分けたものです。ターニングポイントは同じで、番号のつけ方が違います
五幕構成(フライタークのピラミッド) 五つ 導入、上昇、クライマックス、下降、破局。クライマックスが真ん中に来るので、悲劇に向いています
SAVE THE CATの法則 15のビート 三幕を細かくしたもので、ビートごとに名前とページの目安があります
ヒーローズジャーニー 12の段階 出発、試練、帰還の三部に分かれる旅で、三幕とだいたい重なります

長編の大きな筋を三幕構成で立て、その中の部や1話を起承転結で組む書き手もいます。二つの使い分けはプロットの書き方にまとめました。

三幕構成でよくある失敗

中だるみする。 第二幕は本の半分です。ミッドポイントとピンチポイントがないと、どれも同じに見える障害が並ぶだけになります。ミッドポイントには、秘密が明かされる、立場がひっくり返る、目標が変わる、といった本物の変化を置きます。

第一プロットポイントが受け身になっている。 主人公に何かが起きるだけで、主人公は何も選んでいない。第一幕の終わりは、主人公が自分で決める場面にするといちばん効きます。

クライマックスが別の問いに答えている。 始まりで「ハルとは誰か。千夏は父に逆らえるか」と問いかけておいて、クライマックスがハルの正体を明かすだけで終わると、結末がずれて感じられます。テンプレートに書いた中心の問いに、クライマックスが答えているかを確かめます。

構造が透けて見える。 読者に幕の切れ目を感じさせてはいけません。物語に必要だからではなく、割合がそう言うからターニングポイントが来ているなら、その場面は動かします。

TypeTakで、三つの幕を目で見る

TypeTakは、エージェントと一緒に書くAI執筆エディタです。長編の構成を考える時に知りたいのは、それぞれのターニングポイントがどの章に来ていて、そのあいだに何が足りないかです。

  • 幕を列として並べて見られる。 出来事をボードにカードとして置き、部ごとにグループにまとめます。一つの列が一つの幕や部になるので、薄い第二幕や詰め込みすぎた第一幕がひと目で分かります。
  • 転換の場面に誰がいるかが分かる。 カードには、その出来事に出てくる人物がついています。人物ごとに並べると、敵が二つのピンチポイントに両方とも出ているかを確かめられます。
  • 構成から、そのまま1章を書ける。 エージェントに次の章を頼むと、まず執筆プランのカードで、あらすじと目標の分量を見せてくれます。本文を書く前に、そこで直せます。
「前橋」「浜瀬までの道」「ハルの話」が、一つの幕に一列ずつ並んでいます。いちばんカードが多いのは第二幕の列で、和夫は三つの列すべてに出てきます。

三幕にするか、四幕にするか、別の形にするかは、あなたが決めることです。第一幕のあとの長い中盤に脇筋をどう通すかは、サブプロットとはで紹介しています。

よくある質問

三幕構成とは何ですか?

物語を設定(約25%)、対立(約50%)、解決(約25%)に分け、そのあいだを二つのターニングポイントでつなぐ考え方です。多くの小説や映画が、何らかの形でこれを使っています。

ミッドポイントとは何ですか?

第二幕の真ん中、物語全体のおよそ50%に置く転換点です。秘密が明かされたり立場がひっくり返ったりして、主人公が受け身から攻めに転じたり、本当の目標に気づいたりします。長い第二幕を前半と後半に分け、中だるみを防ぎます。

セントラルクエスチョンとは何ですか?

物語の始めに生まれ、クライマックスで答えが出る中心の問いです。「主人公は目標を果たせるか」という形をとることが多く、三幕構成は全体を通してこの問いを引っぱります。

三幕構成と起承転結の違いは何ですか?

三幕構成は、主人公と障害のぶつかり合いを軸に三つに分けます。起承転結は四つに分け、三つ目の「転」で流れを大きく曲げることで物語を動かします。三幕構成はいちばん大きな山がクライマックスに来ますが、起承転結では「転」に来ます。

一つの幕は何話くらいにすればいいですか?

1話の長さによります。全40話の小説なら、第一幕が約10話、第二幕が約20話、第三幕が約10話が一つの目安です。Web小説では、第一幕がずっと短くなることがよくあります。

三幕構成で書かなければいけませんか?

いいえ。四幕、五幕、起承転結、もっとゆるい構成で書かれた物語もたくさんあります。三幕構成は読者がなじんでいるので、出発点として使いやすく、転換点の場所が分かっていれば自由に崩せます。

参考資料

始まり、中間、終わり
松本仁助・岡道男訳『アリストテレース 詩学・ホラーティウス 詩論』(岩波文庫)
三幕構成のパラダイム
シド・フィールド『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術』(安藤紘平ほか訳、フィルムアート社)
ピンチポイント
Larry Brooks, Story Engineering (Writer's Digest Books, 2011)

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