世界観の作り方|小説の世界観設定で決めることと順番
世界観は、物語が起きる世界の時代、舞台、秩序、ルールを決めておいたものです。人物に何ができて何にぶつかるのかを決めるので、世界観が揺らぐと、場面の中の人物の選択も一緒に揺らぎます。
この記事では、小説やウェブ小説を書く人に向けて、世界観をどこまで決めるか、何から決めるかを順番に説明します。例に使うのは、TypeTakの講座実例でたどるウェブ小説連載で書いたウェブ小説『黒魔法使いと言われましたが、得意なのは土掘りだけです』のラビエン王国です。ファンタジーではない例もひとつ付けました。
ひと目でわかるポイント
- 世界観は、物語で使う分だけ決める。二つ以上の場面で使うなら、そこが決めどき
- 決めることは、人物や場所のような対象、時代やルールのような土台、出来事の三つに分かれる
- 順番は、物語が頼るルール → 人物がぶつかるところ → 残り
- 決めた世界観は原稿でまとめて説明せず、場面に要る分だけ出す
世界観はどこまで決めればいいか
世界観を作っていると、通貨の単位や暦、隣の国の王朝まで決めたくなります。決めること自体が楽しいからです。ただ、原稿に出てこない設定は読者に届かず、書く時間を食うだけです。設定ばかりが増えて原稿が進まない、という状態です。
どこで止めるかを先に決めておけば、この状態にはまりにくくなります。
- 二つ以上の場面で使うなら決めます。 一度通り過ぎるだけの地名は名前があれば足ります。何度も戻ってくる場所なら、そのときに詳しく決めます。
- 人物がぶつからないルールは後回しにします。 魔法に代償があるかどうかは、主人公が魔法を使う瞬間に決めれば間に合います。誰も魔法を使わないあいだは空けておいて構いません。
- 決めていないことは「まだ決めていない」と書いておきます。 空欄と、まだ決めていない欄を分けておけば、書いている途中でその欄にぶつかったとき、すぐに決められます。
世界観設定の三つの種類
世界観に入るものは、大きく三種類です。種類ごとに書く形を変えておくと、あとで探しやすくなります。
| 種類 | 何が入るか | どう書くか | ラビエン王国の例 |
|---|---|---|---|
| 対象 | 人物、場所、勢力、物のように名前があるもの | 一項目につき一枚。同じ種類には同じ欄を | ベルカディア王立魔導学院、判定石 |
| 土台 | 時代、舞台、社会の秩序、全員にかかるルール | 一つの文書にまとめて | 魔法が身分と職業を決める国 |
| 出来事 | 物語より前の歴史、物語の中の出来事 | 順番に並べて | 序盤の誤解と入学 → 学院への適応と地位の上昇 → 本物の黒魔法の痕跡 |
土台の文書には、どの対象にも属さないことだけを書きます。魔導学院の歴史を土台の文書に長々と書くと、学院の項目と中身が二つに分かれやすくなります。こう分けることになった経緯は、開発記世界観設定の3つの種類に書きました。
世界観を決める順番
最初から地図を描いて歴史を書くより、物語が頼っているものから決めるほうが、早く原稿につながります。
- 物語の一行を先に書きます。 誰が何をしようとして何にふさがれるのかを、一文で書きます。世界観は、この一文を支える方向で決めます。
- 物語が頼るルールを決めます。 そのルールがなければ物語が成り立たない、というものです。『黒魔法使いと言われましたが、得意なのは土掘りだけです』では「判定石は属性を声で告げ、古い判定石は語末の子音がはっきりしない」がそれにあたります(韓国語では「土」と「黒」の違いがちょうど語末の子音にあり、「土魔法」が「黒魔法」に聞こえます)。このルールひとつから、第1話の誤解が生まれます。
- 人物がぶつかるところを決めます。 主人公が見下される理由、越えなければならない門、守らなければならないものがある場所です。ラビエン王国では魔法が身分と職業を決め、土魔法は序列のいちばん下にあります。平民の少年クレイが見下される理由は、ここから来ます。
- 舞台を決めます。 物語の大半が起きる場所をひとつ決め、そこがどんな見た目かより、そこで何が起きるかを先に書きます。ベルカディア王立魔導学院は五つの塔に分かれていますが、土魔法を教える塔はありません。
- 残りは原稿を書きながら埋めます。 隣の国、昔の戦争、通貨のようなものは、場面が呼んだときに決めます。
この順番のよいところは、決めた設定がすべて場面で使われることです。1〜4まで決めてあれば、第1話を書くには十分です。
世界観設定で決めること
決めることを六つの欄に分けました。欄ごとに、その設定が場面で何をするかと、空けておいてよい場合も並べています。
| 欄 | 書くこと | 場面ですること | 空けておいてよい場合 |
|---|---|---|---|
| 時代 | 技術の水準、物語の「いま」がいつごろか | 人物が使える道具と連絡の手段を決める | 現代が舞台で、読者がすでに知っている場合 |
| 舞台 | 物語が主に起きる場所と、その周り | 場面がどこで始まり、どこへ移るかを決める | 舞台が一か所だけの短い物語 |
| 社会の秩序 | 身分、階級、誰が誰の上にいるか | 人物が誰に見下され、誰に頭を下げるかを決める | 身分が物語に関わらない場合 |
| ルール(魔法、技術、能力) | 何ができて、何が代償で、何ができないか | 人物がピンチをどう越えるか、何では越えられないかを決める | 超自然の要素がない物語 |
| 勢力 | 国、学校、組織、家と、それぞれが望むもの | 人物がどちらの側に立ち、誰とぶつかるかを決める | 対立が人物どうしの間だけで起きる場合 |
| 歴史の大きな出来事 | 物語の前に起きて、いまも残っていること | 人物の恨み、偏見、タブーがどこから来たかを決める | 過去がいまの場面に影響しない場合 |
ルールの欄では、できることよりできないことと代償のほうが大事です。何でもできる魔法はピンチをあっさり解いてしまい、緊張が生まれません。
そのままコピーして使える世界観設定のテンプレート
登録もメールアドレスもいりません。下の枠をそのままコピーして使えます。使わない欄は消さずに「まだ決めていない」と残しておきます。
[物語の一行] 誰が、何をしようとして、何にふさがれるか: [物語が頼るルール] ルール: このルールがないと何が成り立たないか: [時代] 技術の水準: 物語のいま: [舞台] 主な舞台: 主な舞台で起きること: 周りの地域: [社会の秩序] 誰が上にいて、誰が下にいるか: 主人公はどこにいるか: [ルール(魔法、技術、能力)] できること: 代償: できないこと: 誰が使えるか: [勢力] 名前: 望むもの: 主人公との関係: [歴史の大きな出来事] 何があったか: いま何が残っているか: [まだ決めていないこと] 問い: いつまでに決めるか:
例:ラビエン王国の世界観
『黒魔法使いと言われましたが、得意なのは土掘りだけです』を、第1話を書く前の段階で埋めるとこうなります。歴史の欄はまだ原稿で使っていないので、決めないままにしてあります。
| 欄 | 内容 |
|---|---|
| 物語の一行 | 土魔法しか使えない平民の少年が、黒魔法使いと誤解されて王立魔導学院に入り、誤解のおかげで得た居場所と本当のことの間で踏ん張る |
| 物語が頼るルール | 判定石は結果を文字ではなく声で告げる。古い判定石は語末の子音がはっきりせず、「土魔法」が「黒魔法」に聞こえる |
| 時代 | 魔法が暮らしと職業に広く使われている王国の時代 |
| 舞台 | ベルカディア王立魔導学院。五つの塔(紅炎、青流、白光、青銅、黒曜)に分かれ、土魔法を教える塔はない |
| 社会の秩序 | ラビエン王国では魔法が身分と職業を決める。土魔法は序列のいちばん下で、ほぼ土木技術の扱い |
| ルール | 黒魔法の適性者が出たら確認の手続きを取る。土魔法は地面を掘り、土をよみがえらせる暮らしの魔法 |
| 勢力 | 王族や貴族の受験生、黒魔法使いの後継者がほしい学院の上層部 |
| 歴史の大きな出来事 | まだ決めていない |
| まだ決めていないこと | 学院の近くの土地がおかしな腐り方をする原因、本物の黒魔法使いが姿を見せる時期 |
ルールの欄の判定石と、社会の秩序の欄の序列がかみ合って、第1話が動きます。見下されていた平民が、判定石のひとことで急に恐れられる側に回るわけです。物語が頼るルールと人物がぶつかる秩序を先に決めると、こうして最初の出来事が世界観からそのまま出てきます。
ファンタジーでないとき:現代が舞台の世界観
現代の学園ものやお仕事ものでも、世界観は決めます。読者がすでに知っている世界なので時代と技術は空けておけますが、その作品にしかない秩序は別に書いておく必要があります。
たとえば、成績順に寮の部屋が決まる高校を舞台にするなら、決めることはこうなります。
- 社会の秩序:成績上位は一人部屋、下位は四人部屋。学期の途中で部屋が替わることもある。
- ルール:試験の結果は名前と一緒に廊下の掲示板に貼り出される。不正がばれたら、すぐ四人部屋に移る。
- 勢力:一人部屋の生徒どうしの勉強会、四人部屋で一緒に暮らす仲間。
ファンタジーの魔法のルールと同じで、こうした秩序も、人物が何にふさがれ、誰とぶつかるかを決めます。
世界観を作る質問30
テンプレートの欄がうまく埋まらないときは、下の質問から始めてみてください。質問ごとに、その答えを使う場面を付けました。全部に答える必要はありません。この物語の場面で使う質問だけを選べば十分です。
| まとまり | 質問 | この答えを使う場面 |
|---|---|---|
| ルール | この世界で、ふつうの人にはできず主人公にはできることはあるか | 主人公が初めて力を見せる場面 |
| ルール | その力を使うと何を失うか | 主人公が力を使うかどうか迷う場面 |
| ルール | その力でも絶対にできないことは何か | 力では解けないピンチ |
| ルール | ルールを破ると誰が気づき、どうなるか | こっそりルールを破る場面、ばれる場面 |
| ルール | ルールの仕組みを知っているのは誰か | 師匠や学者が説明する場面、主人公が思い違いをしている場面 |
| 社会 | いちばん上にいるのは誰で、その地位は何で決まるか | 身分の差が見える最初の出会い |
| 社会 | 主人公はその秩序のどのあたりにいるか | 主人公が見下される場面、もてなされる場面 |
| 社会 | 身分を変える道はあるか。その道はどれくらい狭いか | 主人公が初めて目標を口にする場面 |
| 社会 | 人々が当たり前に信じている偏見は何か | 人物が偏見どおりに誤解する場面 |
| 社会 | タブーは何で、破るとどうなるか | タブーに触れる出来事 |
| 舞台 | 物語の大半が起きるのはどこか | ほとんどの場面 |
| 舞台 | そこに入ったり出たりするには何が要るか | 入学、入隊、入社のように門をくぐる場面 |
| 舞台 | そこでいちばん人が集まる場所はどこか | うわさが広まる場面、人前での対決 |
| 舞台 | 誰も行かない場所はどこで、なぜか | 秘密が隠された場所、こっそり会う場面 |
| 舞台 | 初めて来た人がまず驚くものは何か | 主人公が初めて舞台に足を踏み入れる場面 |
| 勢力 | この世界でぶつかり合っているのは、どことどこか | 大きな対立が表に出る場面 |
| 勢力 | それぞれの集団がいちばん望んでいるものは何か | 交渉、裏切り、同盟 |
| 勢力 | 主人公はどの集団に属しているか。どの集団に求められているか | 勧誘の場面、どちらにつくか選ぶ場面 |
| 勢力 | 集団の中でも意見が割れている問題は何か | 味方どうしの言い争い |
| 勢力 | いちばん力のある集団が隠していることは何か | 中盤のどんでん返し |
| 歴史 | いまの秩序は、いつ、どんな出来事でできたか | 人物が「昔からそういうもの」を疑う場面 |
| 歴史 | 人々がいまも覚えている大きな出来事は何か | 年長の人物が昔の話を持ち出す場面 |
| 歴史 | その出来事について、間違って伝わっていることは何か | 本当のことが明らかになる場面 |
| 歴史 | その出来事のせいで、いまも恨みを抱いているのは誰か | 古い恨みが噴き出す場面 |
| 歴史 | 消えたと思われているのに残っているものは何か | 後半にまた現れる脅威 |
| 暮らし | 人々は一日をどう過ごしているか | 事件のない場面、ひと息つく場面 |
| 暮らし | 何を食べ、何が貴重か | 食事の場面、贈り物や取引の場面 |
| 暮らし | 人々はお互いをどう呼ぶか | 呼び方で距離が見える会話 |
| 暮らし | 子どもでも知っている話や歌はあるか | 伏線を仕込む場面 |
| 暮らし | 主人公にとっていちばんなじみのある匂いや音は何か | 故郷を思い出す場面、視点人物の描写 |
決めた世界観を原稿に入れる
世界観を熱心に決めるほど、原稿の冒頭で全部説明したくなります。けれども読者は、説明より先に場面を読みたいものです。説明が長く続く段落では、物語が止まってしまいます。出し方の目安は次のとおりです。
- 人物がぶつかったときに出します。 ラビエン王国の序列は、最初から説明しなくても、試験会場でクレイが見下される場面ひとつで伝わります。
- 人物が知らないことだけを説明します。 その世界で育った人物は、当たり前のことを心の中で説明したりしません。説明が要るなら、初めて来た人物や思い違いをしている人物の目を借ります。
- ひとつの場面で出す新しい設定は一つか二つにします。 残りは、その設定を使う場面まで取っておきます。
決めた世界観を原稿と食い違わせない
世界観は、書いているあいだにも変わっていきます。書いていくうちに新しい場所が出てきて、最初に決めたルールを直すことにもなります。そのたびに設定の文書も一緒に直しておかないと、第3話で決めたルールと第20話の場面が食い違います。
決めた世界観は、人物の設定シートと一緒に、設定資料一か所にまとめておくのがおすすめです。設定資料に何を入れ、どう原稿と合わせるかは設定資料集の作り方に、人物一人分を書くテンプレートはキャラ設定テンプレにまとめました。
世界観を整理するツールを探しているなら、世界観向けのツールを比べたWorld Anvilの代わりになるツールも参考にしてください。
TypeTakで世界観を作る
TypeTakは、エージェントと一緒に書くAI執筆エディタです。世界観は、グラフを兼ねた設定の辞典であるワールドに置きます。この記事で分けた三種類は、ワールドでもそのまま分かれます。
エージェントは、草稿を書く前や質問に答える前に、ワールドから必要な設定を探して読みます。そのため、第1話で決めた判定石のルールが、第20話の草稿にも引き継がれます。この世界観をエージェントとの会話で決めていった過程は、講座一行のアイデアをウェブ小説の世界観にで見られます。
よくある質問
世界観は物語より先に作るべきですか?
物語の一行と、その物語が頼るルールくらいを先に決めれば足ります。残りは、原稿を書きながら場面が呼んだときに決めても遅くありません。世界観を全部作ってから書こうとすると、原稿を始める前に疲れてしまいがちです。
世界観の設定はどこまで細かく決めればいいですか?
二つ以上の場面で使う設定は詳しく、一度通り過ぎるだけの設定は名前だけで十分です。ルールは、できることより、代償とできないことを先に決めておくほうが場面の役に立ちます。
世界観とワールドビルディングは同じ意味ですか?
ほぼ同じことを指します。ワールドビルディング(worldbuilding)は英語で世界を作る作業を呼ぶ言葉で、日本語でいう「世界観を作る」「世界観設定」にあたります。日本語の「世界観」は作る作業ではなく、できあがった世界の決まりごとのほうを指すことが多い、という違いはあります。
世界観と設定資料はどう違いますか?
世界観は物語の時代、舞台、秩序、ルールを決めた中身で、設定資料はその世界観に人物や出来事の順番まで加えて、作品の事実を集めた文書です。世界観は設定資料の一部として入ります。設定資料の作り方は設定資料集の作り方にあります。
世界観作りのサイトやソフトを使ったほうがいいですか?
最初は文書ひとつで十分です。項目が増えてお互いにリンクを張りたくなったり、地図や年表と一緒に見たくなったりしたら、世界観向けのツールを検討してみてもいいでしょう。ツールごとの違いはWorld Anvilの代わりになるツールにまとめました。
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実例でたどるウェブ小説連載
→韓国のウェブ小説『黒魔法使いと言われましたが、得意なのは土掘りだけです』1作を、TypeTakで構想から連載直前まで仕上げていく過程をそのままたどります。