5,000字の第1話を「引き」で終える
前回は、ボードに部ごとの出来事を置きました。今回はいよいよ第1話を書きます。
ウェブ小説の第1話には、2つのものが必要です。プラットフォームが求める分量と、次の話を開かせる最後の場面。今回は、その2つをどう合わせるかをたどります。
1. 「1話書いて」 — 設定はエージェントが探して読む
ワールドを参照
依頼はこれだけです。どんな場面か、誰が出てくるかを説明し直してはいません。エージェントは書く前に、第1話に必要なものをワールドから自分で探して読みました。チャットに出た ワールド参照 の行がその跡です。
- ボードの第1部の出来事 — 「魔力の乏しい平民の少年として見下されるクレイ」「クレイの魔力量検査」「判定石が土魔法を音声で告げる」「土魔法の判定が黒魔法の判定と誤解される」
- 人物「クレイ・ローウェン」 — 外見と態度、性格、目標と動機、能力、口調
- 場所「ベルカディア王立魔導学院」 — 教育環境、施設と塔
前回、出来事カードごとに「何が起きるか・何を誤解するか・そのあと何が変わるか」を埋めておいたのが、ここで生きます。エージェントは出来事ごとにその欄を読み、第1話を組み立てました。
2. 書く前にプランを見る
エージェントはすぐには書かず、まず 執筆プラン を見せました。第1話を4つのビートに分け、ビートごとに何が起きるかと、どう書くかを記しています。
第1話。魔力の乏しい平民の少年。ベルカディア王立魔導学院の入学試験会場に着いたクレイは、王族や貴族の受験生に囲まれ、平民の出だというだけで見下される。彼が試験に臨むのは、魔法使いとして名を上げたいからではない。資格を取って安定した職に就き、家族を助けたいからだ。
- クレイの一人称に近い視点で、華やかな学院と自分の古びた身なりを対比させる。
判定石がクレイの属性を音声で告げようとした瞬間、試験会場全体が静まり返る。クレイは「土魔法」というありふれた結果を予想しているが、古い判定石の不明瞭な発音と周囲の先入観が、まったく別の意味を生み出してしまう。
- クレイの属性の結果を、読者がすぐには完全に確かめられないようにする。
- 試験官と受験生の表情が驚愕に変わり、それまでの侮りが恐怖と警戒にひっくり返る。
- 自分の名を呼ぶ声を聞いたクレイが、何が起きたのかを問い返す場面で終える。最後の一文は、次の話の誤解を直接開くセリフで締める。
最後のビートには、すでに「引き」が組み込まれています。結果を読者がすぐには確かめられないようにし、次の話の誤解を開くセリフで終える、という行です。第1話の結末を別に頼まなくても、先に決めた第1話のどんでん返し(低評価 → 誤解による高評価)を読み取り、その瞬間で切るように組んでいました。
カードの下の分量は 5000–5500文字 です。この5,000字前後という長さは、韓国のウェブ小説連載の1話分の形式に合わせたものです。自分が連載するプラットフォームで求められる長さに合わせて決めてください。
依頼の中で分量を指定しなければ、原稿に設定した執筆スタイルの基準の分量に従います。連載するプラットフォームに合わせて変えたいときは、この欄の数字を直してください。
ビートの文は、直接書き換えることも、+ ビート で追加することもできます。プランが気に入ったら そのまま書く を押します。
3. プランどおりに書く
執筆スタイルを参照
「平民でも魔力が多ければ話は別だけどな。でも、あの顔じゃどう見ても……」
語尾は濁ったが、言いたいことはわかった。僕を見る目が服から手へ、手からまた魔力測定の列へと移っていく。
草稿は、原稿の執筆スタイルを読んでから書き始めます。まずどんなスタイルがあるかを一覧で見てから、この作品のスタイル「執筆スタイル(ウェブ小説)」を読みます。
書いている間、カードには原稿が2行ずつしか流れません。エージェントがひととおり書き終えたあと、執筆スタイルに照らして自分で見直し、文体を整えているからです。整え終わると、カードが草稿に切り替わります。
第1話 魔力の乏しい平民の少年
ベルカディア王立魔導学院は、城門をくぐるとすぐに姿を現した。白い石壁の上に青い屋根が幾重にもそびえ、中央の塔の頂には王国の紋章が金色に刻まれている。朝日がその紋章に当たるたび、まぶしさに目がくらんだ。
僕は入口の前で、一度自分の服を見下ろした。着古して色あせたシャツ。肘の擦り切れた上着。母さんが夜なべして繕ってくれたズボン。裾についた土ぼこりは、はたいても落ちきらなかった。
反対に、試験会場へ入っていく子たちは誰もがきらびやかだった。銀糸をあしらった制服、宝石のはまった杖、家紋を刺繍したマント。その中に立っていると、僕の服だけが別の世界のもののように見えた。
「あいつ、平民じゃないか?」
思わず声が漏れると、周りの視線がいっせいに集まった。
手のひらの下に振動を感じた。土に触れるときと同じ、弱くて鈍い動きだった。
判定石がふたたび鳴った。
【クレイ・ローウェン。属性判定……】
今度は、誰ひとり息の音さえ立てなかった。
試験官の手がゆっくりと下りた。
その視線が、僕の顔と判定石のあいだを何度も行き来した。
「記録官を呼べ」
「試験官殿?」
「今すぐだ。黒魔法適性者の確認手続きを始める」
僕は判定石から手を離せなかった。
「待ってください。今……僕の属性が黒魔法だと言いましたか?」
プランの第1ビートどおり、華やかな学院と古びた身なりの対比で幕を開けます。服の裾の土ぼこりが、土魔法使いという正体を最初の段落から示しています。結末はプランの第4ビートどおり、次の話の誤解を開くセリフで切りました。完成した第1話は 5,005字。目標にした5000–5500文字の範囲に収まっています。
4. 書いた原稿はワールドに戻る
第1話を書く間に、ワールドになかった設定が生まれました。クレイがどこで育ち、どうやって土に慣れ親しんだか、といったことです。原稿を書き終えると、チャット入力欄の下の ワールド待ち にその原稿がたまります。
整理する を押すと、エージェントが原稿で新しく生まれた設定を見つけ、ワールドに加えます。クレイ・ローウェンの項目には「出身と暮らしの背景」が新しくでき、その内容がどの原稿から来たのかを示す01が横につきました。
こうしておけば、第2話、第10話、第50話を書くときも、エージェントは第1話で決まった事実をワールドから探して読みます。連載が長くなるほど、この循環が積み重なります。ワールドを読んで書く → 書いた原稿から新しい設定をワールドに戻す。
今回使った文
- 「1話書いて」 — 場面の説明なしで頼む
- プランのカードで分量とビートを確かめて そのまま書く
- 書き終えたら ワールド待ち で 整理する
次回
次回は、書き上げた第1話を直します。フィードバックで強みと弱み、ワールドの設定と食い違うところを確かめ、文の単位で整えます。
この回で使った機能
詳しい使い方はガイドにあります。
『黒魔法使いと言われましたが、得意なのは土掘りだけです』をTypeTakで自ら構想して書き、その過程をこの講座にまとめました。